なぜ、企業グループはグループを形成するのか。それは、多様な業務の結合で構成される事業の遂行において、組織の非効率を排する目的で、異なる業務内容に即して組織が分割され、分社されることもあるために、企業グループが生まれるのであろう。

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そこで、人事処遇制度について考えるときは、一方では、分社されていることの合理性に応じて、グループ内各社に固有の制度が必要になるとしても、他方では、グループとしての統合を表現し、同一グループへの帰属意識を醸成するものとして、グループ共通制度も必要になるはずである。例えば、具体的には、給与や賞与については各社固有の制度とし、福利厚生制度についてはグループ共通にするということである。
給与や賞与は、働く人それぞれの成果と貢献に適切に報いるものとして、組織に固有の職務内容と働き方に基づいて決められなくてはならないから、各社ごとに異なっていることに合理性がある。それに対して、福利厚生制度は、所属組織を超えてグループ内で働く全ての人について、働くための共通環境を整備するものとして、グループ共通であることに合理性がある。
そして、福利厚生制度の重要な機能は、企業グループの総合的な人事戦略として、同一の働く環境を提供することで、同一グループへの帰属意識とグループとしての一体感を醸成するだけでなく、環境の魅力度を高めることを通じて、人材市場における競争力を強化することなのである。