〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、中卒のみ上昇した。高卒は低下、大卒以上は前月と変わらなかった。

・中卒以下 47.7%、前月は46.6%と4ヵ月ぶりの水準を回復、2月は48.3%と2008年3月(48.2%)を超え過去最高を更新 ・高卒 56.5%、前月は57.0%と2022年1月以来の水準を回復、2020年3月は57.1%、20年2月は58.3% ・大卒以上 73.4%と前月と変わらず2020年1月以来の高水準を維持、2020年1月は73.7% ・全米 62.6%と5ヵ月連続で横ばいで20年3月(62.7%)以来の高水準、20年2月は63.3%

学歴別の失業率はまちまち。労働参加率が改善した中卒で失業率も低下、高卒は労働参加率に従って低下した。一方で、大卒以上は横ばい、大学院卒は逆に2.5%と2022年7月以来の高水準だった。バイデン政権の肝煎りの学生ローン返済免除が米連邦最高裁判所で無効との判断を下されるなか、高額な学生ローン支払い負担を余儀なくされる大卒以上、特に大学院卒の失業率の悪化は懸念材料だ。

・中卒以下 5.2%と6ヵ月ぶりの低水準、前月は6.0%と2022年8月以来の水準へ上昇、2022年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低 ・高卒 3.4%と2019年4月以来の低水準、前月は3.9% ・大卒 2.0%と前月と変わらず、2022年9月は1.8%と2007年3月以来の低水準に並ぶ ・大学院卒以上 2.5%と2022年7月以来の高水準、前月は2.3%、2021年12月は1.3%と2000年4月以来の低水準 ・全米 3.6%、前月は3.7%と22年10月以来の水準へ上昇、4月は3.4%と1月に続き1969年5月以来で最低

チャート:失業率は大卒のみ低下、中卒と大学院卒は上昇、高卒は横ばい

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チャート:米景気減速が一因なのか、高賃金とされる大学院卒の失業率は労働参加率が高止まりするなかで上昇

nfp23jul_eurc (作成:My Big Apple NY)

--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。

①平均時給の上昇ペースは改善、前月比マイナスの業種もその他サービスのみ。

②働き盛りとされる25~54歳の男性(25~54歳)をみると、全体的に上昇。ただし、年齢別では24歳以下が低下した一方で、25歳以上の上昇が目立っており、経験のある労働者が選好されている事情を反映か。

③男女別では、男性で労働参加率が低下しつつも失業率は低下、女性は労働参加率が上昇しつつ失業率は前月と変わらず、特に男女差が激しいのは労働参加率で、65歳以上をみると、男性の労働参加率が低下した半面、女性は2020年2月以来の水準へ急伸。

④人種別では労働参加率が改善した白人、黒人の間で失業率が上昇していた。ヒスパニック系男性も、労働参加率につれ失業率は上昇。逆に白人男性は、労働参加率が低下しつつ失業率は横ばい。黒人男性のみ、労働参加率につれて失業率も改善。

⑤学歴別では、大卒以上の労働参加率が高止まりするなか、大学院卒の失業率は2022年7月以来の水準へ上昇。逆に中卒のみ。労働参加率が上昇したものの失業率は低下。

米7月雇用統計の家計調査では、パートタイムと複数の職を持つ者が増加した一方で、フルタイムが減少していました。フルタイムの減少は、大学院卒の失業率上昇につながったと考えられます。同時に、パートタイムが増加したにもかかわらず、男性より労働市場の減速局面で脆弱な白人と黒人など女性で失業率が弱含んでいました。黒人男性の失業率が改善した一方でこれまで堅調だったヒスパニック系男性が上昇するなど、労働市場に歪みがみられます。ジュリー・スー労働長官代行は米7月雇用統計後に「ゆるやかで安定的な成長の一例」と評価したものの、労働市場は着実に減速しつつあると言えそうです。

編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年8月6日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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