小野さん自身は、「自分は宗教者ではないのかもしれない」という。「お釈迦様の教えは、宗教ではなく『哲学』だと考えています。お釈迦様は例えば、『自分を助けられるのは自分しかいない』という言葉を残している。これは哲学だと思います。お釈迦様の教えに、突っ込みも入れますよ」と笑う。

思えば、10代の僕は、天理教の教えに対して、「突っ込み」を入れていたのだ。小野さんに近しいものを感じて、うれしくなった。

小野さんは、東京大学で生物学を専攻した。だから現代社会を、生物学の視点で見る。「生物は集団で生きるのが本能。それなのに今は個人で稼ぐ、個人の権利が強調されすぎている。ゆえに、少しずつ心のバランスを崩す人が、増えているのではないか」と語る。僕も、まったく同感だ。現代の人間のつながりは、ほとんどがビジネスだ。だから自殺が多いのではないかと考えている。

現代にはビジネス抜きで、「人と人がつながる場」が必要だ。「田原カフェ」もまさにそんな場だ。小野さんの出家、生き方には、正直わからないところもある。しかしそれがまたおもしろい。世の中にはいろんな人間がいる。すべて理解できるわけではない。またこれからも多くの人と会い、つながっていきたいと改めて思う。

編集部より:この記事は「田原総一朗 公式ブログ」2023年7月28日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?