しかし、右派のうち、EUやNATOに否定的な勢力が台頭し、ジャン=マリー・ル・ペン(マリーヌの父)が創立した国民戦線(FN/現・国民連合)など極右、それから、環境派も台頭してきた。

しばらくはド・ゴール派、社会党、国民戦線、共産党が有力大統領候補を出すというパターンが続き、ル・ペンが02年に大統領選決選投票に残ったが18%の得票にとどまった。

ソ連共産党の長女とすらいわれた共産党が強かったのは、日本のかつての総評(日本労働組合総評議会)に当たるフランス労働総同盟(CGT)が共産党系であったのと、第2次世界大戦ではド・ゴール派などとともにレジスタンスの主力としてドイツと戦い、愛国主義政党としてのお墨付きを得ているからで、そこが愛国的とは言いがたい日本共産党は違う。

しかし、欧州議会選挙や大統領選挙の結果を見ると、いずれも2%台にとどまり。かつては20%ほどの得票があったのから大変な凋落ぶりで、党名変更も噂されている。

旧西ドイツでは、共産党はナチスと同じくその存在が憲法上否認され年に解体されたが、68年に別組織の共産主義政党の設立が認められた。だが、党勢は振るわず、東ドイツで政権党だった「ドイツ社会主義統一党」の残党と、西ドイツ社民党のラ・フォンテーヌ氏など左派が合流し、一応は西欧的民主主義を標榜する「左派党」という党になっている。

21年の連邦議会選挙ではこの左派党が、比例得票率4.9%、議席で5.3%。19年の欧州議会選挙は投票率5.5%だった。

ドイツでは比例代表制で得票率を基礎に議席数が決まるので二大政党に収斂せず(ただし議席を得るためには5%の得票が必要なので小党乱立ではない)、過半数を確保して政権を握るためには複雑な連立交渉が必要となる。だが、国政レベルでは、極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」と極左の「左派党」のいずれも連立交渉の選択肢とすべきでないというのが主要政党の不文律になっている。

イタリア共産党は、アントニオ・グラムシやパルミーロ・トリアッティといったイデオローグもいたことで、ユーロコミュニズムの旗手としてソ連東欧型の党とは一線を画し、政権参加したこともあった。

しかし、冷戦終結後の91年、共産党の名にこだわる左派を斬り捨て「左派民主党」となり、政党再編成の中で左派・リベラル連合である「オリーブの木」に参加して政権を獲得する。その後、07年にはかつてのライバル、キリスト教民主党の残党などとともに「民主党」という中道左派政党を結成し、元共産党員のジョルジョ・ナポリターノ大統領まで排出した。

イタリアでは18年の総選挙でポピュリスト政党「五つ星運動」が上下両院の第1党となり、極右のともいわれる「同盟」や民主党と連立政権を担ったり、コロナ禍に対処するために、実務家として評価の高いマリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)前総裁を首班とする連立政権を組んだりした。

だが、2022年の総選挙では、極右の「イタリアの同胞」が24.7%で第一党になり、同じく極右の「同盟」(サルビーニ書記長)、中道右派「フォルツァ・イタリア」(ベルルスコーニ元首相)との連立でジョルジャ・メローニが初の女性首相となるという大波乱だ。

ただし、ヨーロッパの中でも、共産党の地位が少し違うのは、スペインとポルトガルだ。これには1970年代までフランコやサラザールといった独裁者やその継承者の政権で、彼らの没後に一種の民主革命が起き共産党も大事な役割を果たしたことで市民権を得ている。

それでは日本では共産党はどうあるべきなのか?それは次回に論じたい。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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