そういう理想的家族像を前面に掲げる前述のエリート氏からすれば「バンクーバーの日本人は離婚ばかりしてなんという風紀の乱れ方だ!」と小言の一つも言いたくなるのでしょう。

時代が変わったのはバブル崩壊後からだと思います。女性の地位を引き上げ、社会に進出することを国を挙げて進めています。専業主婦率は1980年の1100万世帯から2022年には539万世帯に減少、家族全体でも30%を切った(日経)と報じられています。4大卒の女性が急増し、社会で活躍の場も増える中、刺激も多いし、人生観もどんどん変わります。仮に20代半ばで結婚した若夫婦がいたとしても双方がその後も社会での刺激を受け続ければ人生観はどんどん変質化します。いや、しない方がどうかしています。この辺りが「性格の不一致」に繋がりやすい外的要因だと思います。

今、終身雇用は必ずしも支持されない時代になりました。それは22歳で入社した会社に65歳まで捧げられるかという話なのです。情報が増え、ディスクロージャーの世界の中で脇目もふらずにまっしぐら、というのは大手企業の雇用の傘の下でそのぬくもりに甘えているか、「我慢強い」希少価値になりつつあります。当地で同じ会社に10年勤めていると言えば「その会社はそんなに居心地がいいのか?」と皮肉を言われます。

それと同様、夫婦生活も似たものがあるのです。20代半ばでどうして人生のゴールを達観できるのか、高い山に登る成長を目指すのか、海岸で寝そべる楽な生活が良いのか、20代、30代、40代の刺激だらけの中で悩みは尽きないのです。このブログをお読みの方は比較的高齢者が多いので私の言っていることには無茶苦茶で違和感満載でしょう。しかし、これは明らかな傾向なのです。

2021年の結婚件数は50万組、離婚件数は18万組です。この数字の見方は気をつけないといけません。なぜなら離婚件数は全婚姻世帯の総数が分母である一方、結婚件数の2倍を分母の未婚者の数でみるべきなので、アップルトゥアップルになっていません。よって離婚率という数字ならば1.50(人口1000人当たりの離婚件数)で、アメリカなら2.3程度のようです。それでも日本の離婚も増えたなぁ、という実感です。

ところで福原愛さんが元夫との子供を日本に連れて帰ってしまった問題が週刊誌的話題になっています。日本の家裁が子供を元夫に返すよう保全命令が出ていますが、福原さんは我関せずの姿勢を貫いています。この手の問題は海外で離婚した日本人の元妻に非常に多く、子供を連れて日本に帰ってしまい、元夫がクレームするケースが多発しています。これはハーグ条約上、絶対に許されない行為で日本人の連れ去り問題があまりにも多い中、国際批判の対象となっています。

閑散休題。冒頭のトルドー首相に限らず、ビルゲイツ氏やジェフベゾス氏など人生を改めるケースは珍しくなく、それが元夫婦の人生の刺激の結果でもあり、新たな挑戦でもあります。その一方、結婚、離婚のプロセスと法的縛りが嫌でパートナーという関係を維持している人たちも私の周りでは本当に増えたと思います。パートナーを「同棲」という偏見を持ってみるせいか、日本では法的にも社会的認知度も非常に遅れていると思います。

人生の駒の進め方はいろいろな選択肢があるのです。その人に合ったやり方を選べるようになったというのは自由でオープンな社会の証でもあると言えるでしょう。私は決して離婚のススメをしているわけではありません。夫婦円満に越したことはない、だけど、円満じゃない仮面夫婦もあるわけで、結婚って何だろうね、と思ってしまう訳です。社会はそれぐらい大きく変質化してきているともいえそうです。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月6日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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