エル・ゴハリ特派員は、「レバノン社会は外貨を得ることができる少数の上層部とそうではない大多数の国民に完全に分裂している。多くの若者は未来に希望をもてずにいる」という。同特派員によれば、アラブ諸国の問題点は3点、「貧困」と「不平等」、そして「無気力感」という。レバノンの現状はその3点が全て当てはまるわけだ。
新型コロナウイルスの感染拡大の直前の2019年、金融危機のさなか、国民の生活状態は悪化し、政府の無能と腐敗に抗議する大規模デモが起きたが、ポスト・コロナの今日、国民の間では政府に抗議して立ち上がるといった動きはない。同特派員は、「レバノン国民は集団的欝状況(Collective Depression)に陥っている。自身や家族をどのようにして養うかで頭の中は一杯だ」と表現していたのが印象的だった。
そのような状況下で、レバノン南部のイスラエルとの国境沿いでは、イスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ」がイスラエルに軍事挑発を繰り返すなど、イスラエルとヒズボラの間で緊張が高まっている。イランから軍事支援を受けているヒズボラの指導者ナスララ師は7月12日、ガジャル村の周辺にコンクリートの壁を建設しているとしてイスラエルを非難、「イスラエルがわれわれに対して行動するなら、黙っていない」と警告、強硬姿勢を崩していない。
政治と経済の停滞、ヒズボラの軍事活動、レバノンは内外ともに厳しい状況下にある。欧州連合(EU)はレバノン政府に大爆発事故の調査を求めるが、その姿勢は弱い。「レバノンからの大量の難民が欧州に殺到することを恐れ、レバノン側に圧力を行使できないでいる」(エル・ゴハリ特派員)というのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年8月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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