大量破壊兵器の核爆発以外ではこれまで最大の爆発事故といわれたレバノンのベイルート湾大爆発事故から4日で3年目を迎えた。ベイルート湾の倉庫に保管されていた硝酸アンモニウム約550トンが突然大爆発を起こし、湾岸労働者や周囲の住民らが犠牲となり、220人以上が死亡、少なくとも6500人が負傷した。ベイルート港と市内全域が破壊された光景が世界に放映されると、国際社会は衝撃を受けた。

ベイルート湾大爆発事故3年目を迎え、国連に事故の独立調査団の設置を要求する人々(2023年8月4日、オーストリア国営放送ニュース番組からスクリーンショット)
大爆発事故から3年が経過したが、事故の原因解明は依然進まず、事故の責任を取って辞任した政治家、関係者はなく、国民の間では政府に対する批判や不満、憤りの声が高まっている。
4日、事故の解明が遅れていることに抗議するデモが行われた。日本外務省は「抗議行動等に遭遇した場合は決して近づかず、直ちにその場を離れるように、また、抗議行動に巻き込まれないよう、平素より関連情報を収集し、夜間の不要不急の外出は控えるべきだ」などを明記した趣旨の警戒を呼び掛けていたが、現地からの情報ではこれまでのところ抗議デモ参加者と治安部隊との衝突は報じられていない。
オーストリア国営放送(ORF)の中東特派員、カリム・エル・ゴハリ氏(Karim.EL-Gawhary)は同日、現地から報告していたが、抗議デモは平和裏に行われた。遺族関係者は亡くなった家族の写真を掲げ、国連に独立した事実調査団発足を訴えていた。
事件の検証とその責任について、レバノン当局は曖昧に終始してきた。爆発した硝酸はロシア貨物船の積み荷で、湾岸当局が14年に押収したまま放置してきた。なぜ大量の硝酸アンモニウムが倉庫に10年以上保管されたまま放置されてきたのか。ロシアからの輸入品とすれば、外務省、通商省、運輸省などの管轄下に入るが、大爆発事故の調査では誰一人として起訴されていない。爆発性の極めて高い危険物質が首都ベイルートの港に長い間放置されていた、という事実は無責任という以上に、国家安全に関わる問題だ。国民がそのずさんな危険物管理に憤りを感じるのは当然だろう。
大爆発事故後、2020年8月10日、ハッサン・ディアブ首相(当時)が辞任に追い込まれたが、事故調査を担当する主任調査員ファディ・サワン氏は調査を中断させられ、最終的にはその立場を失う。その後継者タレック・ビタール氏は元閣僚4人の調査に乗り出したが、議会からの抵抗もあって調査は中断。今年1月、ビタール氏は殺人、放火およびその他の犯罪の疑わしい容疑で、検事総長のガッサン・オイダット氏と他7人を提訴した。それに対し、オイダット氏は不服従と「略奪行為」でビタール氏を提訴したが、ビタール氏は辞任を拒否。以上が事故後の政治的、法的な動向だ(AFPの関連情報参考)。
レバノンの国民経済と財政危機は深刻だ。国際通貨基金(IMF)によると、「レバノンでは4年近くにわたる経済破綻により、自国通貨の価値の約98%を失い、国内総生産(GDP)は40%縮小し、インフレ率は3桁に達し、中央銀行の外貨準備の3分の2が流出した」という(アラブニュース2023年6月30日)。