イランで公務員や銀行員は2日間、休業するという。理由は50度にも迫る灼熱による健康被害を最小限度に抑えるためという。40度を超える灼熱が続き、一時期山火事で観光地が大災害を受けたギリシャではロードス島の山火事もようやく抑えられ、落ち着きを取りもどしてきた。

7月26日にIPCCの新議長に選出されたジム・スキー氏 Wikipediaより

ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相が2日、山火事などで観光地から旅行カバンを放置して避難した外国人ゲストに対して、「来年、無料でギリシャに観光できるように補償する」と公約したというニュースが流れた。観光立国ギリシャとしては国を挙げてのイメージ改善対策だろう。

スペイン、ギリシャ、イタリアの南欧の灼熱と山火事を見ていると、地球温暖化や気候不順に批判的な欧州国民も心穏やかでなくなる。オーストリアの過激な環境保護グループ「最後の世代」(ラスト・ジェネレーション)の関係者は2日、オーストリア国営放送(ORF)とのインタビューで、「欧州の現状をみれば環境が破壊されてきていることは明らかだ。もはや悠長なことを言っている場合でない。地球レベルで環境保護対策を実施しなかれば大変なことになる」と警告を発していた。

問題は、環境保護では専門家の間で見解が分かれていることだ。「地球レベルの危機」と主張する専門家がいる一方、「地球の歴史では冷却期や灼熱期が交互にあった。現代の環境問題もその長い歴史から見たら決して特別な現象ではない」と指摘する。

ところで、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の議長に選出されたジム・スキー(Jim Skea)氏は、「気候変動が人類にとって存在の脅威とする主張には反対だが、このままでは地球はより危険な場所となることは間違いない」という。ちなみにIPCCは、国連のジュネーブに拠点を置く機関だ。IPCCは5年から7年ごとに気候科学の最新知識をまとめ、加盟国の政策に対する行動提案を行っている。今回のIPCC報告書は2018年から2022年末までの内容をまとめたもので、加盟国の環境保護対策への土台となるものだ。

IPCCのスキー新議長は、ドイツの複数のメディアに対して、「気候変動に関連する絶望的な警告は人々を麻痺させ、気候のための有益な行動を妨げる可能性がある」と強調し、「私たちは絶滅しない。気候活動家による架空の世界の終焉の警告が問題を引き起こしている。気候変動による人類への存在の脅威はない。地球は1.5度以上温暖化しても滅びることはない」と繰り返し強調した(工業化以前の時代と比較して1.5度まで地球温暖化を抑制することは、パリ協定の目標の一つ)。