「人手不足だからと有給休暇の取得を拒否された」 「有給休暇が取れない会社はブラック企業じゃないですか?」

先日、筆者はこんな相談を受けました。この話を正反対の経営者側から見るとこんな悩み相談になります。

「忙しい時に有給休暇を申請する社員がいて困る」

有給休暇に関する不満や悩みは、企業側、従業員側とも意外と多いものです。

そこで雇用の専門家である社労士の立場から、有給休暇の制度やよくある誤解、買い取りの仕組みなどについて解説したいと思います。

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そもそも「有給休暇」とはなにか?

有給休暇とは、仕事を休んでも賃金が支払われる休暇です。

従業員の心身のリフレッシュやゆとりある生活の実現を目的に労働基準法で認められた労働者の権利です。正式には「年次有給休暇」ですが、有給休暇、有給、年休と呼ばれることもあります。

有給休暇が付与されるためには下記の2つの条件を満たす必要があります。

・入社日から6か月間継続して勤務している ・6か月間8割以上出勤している

この条件を満たす労働者は「すべて」有給休暇付与の対象です。 有給休暇は正社員だけに付与される休暇だと思っている人もいますが、契約社員、パート・アルバイトなど全ての労働者が対象です。

有給休暇の付与日数

有給休暇の付与日数は、図のように勤続年数や雇用形態に応じて変わります。

パート・アルバイトなどの働き方をする人は、出勤日数に応じて有給休暇の日数が増減します。これを「比例付与」と言います。

ここで注意してほしいのが、有給休暇の付与日数は働いた「時間数」ではなく「日数」で決まることです。

パート・アルバイトの間で「あの人は自分より働いている時間が短いのに有給休暇の日数が多くてズルい」という不満が発生することがあります。

例えば、1日8時間で週2日働いているAさんより、1日4時間で週3日働いているBさんの方が付与日数は多くなります。Bさんの方が「働く日数」がAさんより多いからです。

では短い労働時間で働く日数が多い方が得かというとそうとも言えません。有給休暇を取得した際に、1日8時間働くAさんには8時間分の給与が支払われ、1日4時間働くBさんには4時間分の給与が支払われるからです。付与される日数は「働く日数」で決まりますが、有給取得時に支払われる給与は「働く時間」で決まる、ということです。

パート・アルバイトは「シフトで働く予定だった時間」分の給与が支払われるのが一般的です。 働く時間が違うパート・アルバイトの方に「〇時間分」という形で一律の時間の給与を払っている場合は支払いが不足している、従業員側から見れば損をしている可能性があるので注意が必要です。

また、上記の付与日数は法律で決められた最低の日数です。より多くの日数を付与することや、6か月未満で有給休暇を付与することは問題ありません。有給休暇は1日単位が基本ですが、半日単位や時間単位も認められています。