身近な例を挙げるとすれば、人類は昔はピラミットを建設するのに長い時間を要した。また、ウィーンのローマ・カトリック教会の精神的シンボル、シュテファン大聖堂は12世紀から建造が始まり南塔が完成したのは1359年だった。世代から次の世代に継承した仕事だった。
科学技術の進展で建設の場合は時間を短縮できるようになったが、プロジェクトが大きくなればなるほど時間、時には数世代が必要となる課題がNASA関係者の他にもあるだろう。
欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げた宇宙望遠鏡「ユークリッド」からの初めての画像が7月31日に届いた、という外電が流れてきた。「地球から約150万キロ離れた目的の軌道に達し、搭載する赤外線観測装置を調整する際に撮影された試験的な画像で、無数の星の他、銀河の姿も捉えられていた。赤外線観測装置や可視光カメラを搭載するユークリッドは、7月1日に打ち上げられた。そのミッションには、宇宙空間の約70%を占めると考えられている『暗黒エネルギー(ダークエネルギー)』や同25%の『暗黒物質(ダークマター)』の謎に迫ることも含まれる」(時事通信)。
2日未明、目を覚ました。居間が変に明るい。誰かまだ起きているのかと思ったが、月光が部屋に差し込んでいたのだ。忘れていたが、2日は月がスーパームーンの時だったのだ。クレーターが見えるほど大きく、はっきり見える。天文学ではペリジー・ムーンとも呼ばれ、通常の満月より7%大きく見え、17%ほど明るく見えるという。窓越しでしばらくスーパームーンを眺めた。黄金の時間だった。
宇宙森羅万象は世代から世代へと長い時間帯で動いている。地上の人間はその日、その日の生活で喜怒哀楽を感じながら生きている。宇宙の様相はそんな人間に束の間だが世代から世代へと静かに流れる時間を感じさせてくれる。
喧噪な社会に生きている私たちの人生はほんの束の間に過ぎない。ただ、次の世代が始まることで私たちの仕事も継承されていく、と思えば安堵感がくる。同時に、次の世代のために生きている人々に連帯感が湧く。同世代への愛こそ、民族愛、愛国心を止揚できるのではないか。当方はそれを「同世代の連帯愛」、ないしは「宇宙愛」と名付けたいほどだ。

dzika_mrowka/iStock
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年8月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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