仕事の引退は片道切符
仕事を引退することの怖さは、片道切符である点だ。「とにかく仕事がストレスなのでやめたい。もう働くのに疲れて引退したい」という人は「いざとなればまた仕事に復帰すればいい」と考えているかもしれない。しかし、ことはそう簡単ではない。
まず本人が仕事への復帰を希望しても、社会がそれを受容するとは限らないのだ。特に数年、10数年のブランクを作ってしまうと、採用する側は警戒するのが普通である。
これに対して「日本の社会は雇用に閉鎖的だ」と批判する声もあるが、それはおかしな意見だ。なぜなら他の先進国の一部では前職のリファレンスチェックとか、MBAといった市場価値を示すシグナリングを求めるなど、日本以上に慎重さを感じる国家もある。また、他国では日本以上に解雇規制が強力であるため、いざ採用されても即戦力でなければあっさり解雇されてしまうためだ。日本企業にダメダメ言う人は、一度海外や外資系で働いてみれば硬直的な感覚に変化が起きる可能性はある。
話を戻すが、仕事をやめたら復帰は容易ではない。少なくとも以前の仕事の水準と比べて、より単純かつより人手不足で労働集約的な産業を選ばざるを得ない可能性は否定できない。いや、最大の問題は「働こう」という意欲の復活の難しさの方かもしれない。
50代、60代で引退してしまい、生活を切り詰めればなんとかなる状態で仕事をやめ、仕事に復帰するという行動に移すのは大変難しいことは容易に想像がつく。また新しい職場で新しいことを覚え、人間関係に苦慮することを想像すれば「働くよりのんびり過ごしたい」と考えるのが自然である。つまり、社会的理由と本人の勤労意欲減退を合わせて、「仕事をやめたらもう戻れない片道切符」になり得るということだ。
仕事はやめずに変える方がいい上述した通り、仕事をやめてしまうことはとてもリスキーである。若ければなんとでもなるが、中高年以降はブランクを作ると復帰は難しい。ならどうすればいいか?結論、働きやすい仕事へスイッチするのである。
自分は30半ばまで色んな仕事を会社員で経験した。一通り経験して会社員という働き方が自分は向いていないことを悟り、起業して今がある。会社員時代は会社や周囲の人間関係には恵まれたが、能力を上手に発揮できていないという感覚があったが、「仕事は辛いのでもうやめてしまいたい」とは考えたことはなく、「自分の能力を活用できる仕事にシフトしたい」と感じて起業した。
苦心惨憺したものの、今では仕事を楽しいと感じる状態に到達できた。独立して仕事を完全にやめたいと思ったことはない(試しに数ヶ月まったく働かない生活を送ってみたことはあるが)。何歳まで需要があるかは分からないが、できるだけビジネスの延命を努力したいし、仮に今やっている仕事にニーズがなくなっても、すぐさま自分を必要としてくれる仕事を見つけてマーケットに戻りたいと思っている。特にこれから50代、60代と歳を重ねて、変化の早いマーケットから離れてしまうのは、取り残されてしまいそうで恐ろしいという感覚がある。
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ビジネス力のアンチエイジングの意味合いでも、仕事をやめるつもりはないし、他の人にも生涯現役を提案したい。
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