黒坂岳央です。
マクドナルドで90歳で週5勤務する人が話題を呼んでいる。67歳からすでに23年勤務しており、朝7時半~10時半勤務で週5日、元気に働いているという。
【週5勤務】90歳の現役マクドナルド店員、「家でゆっくりしているより仕事を」JMDzHgDUh
23年前、67歳のときにマクドナルドで勤務するようになったという。「階段の上り下りもしますし、日々いろんな方とお会いできるので、出勤することで健康を保てるのだと思います」と話した。 pic.twitter.com/9sEVCNErK5
— ライブドアニュース (@livedoornews) July 30, 2023
SNSでは反応が賛否両論で「生涯現役で素敵」「仕事が生活にハリを与えている」という肯定的な声がある一方、「年金生活が苦しいからだ。運動なら本来、ジム通いできた方がいいに決まってる」というネガティブな声も見られた。
以前から何度か過去記事で主張しているが、個人的には仕事はできるだけ続けた方がいいと思っている。経済力を維持するためというより、健康と脳の老化防止になるためだ。

monzenmachi/iStock
以前よりFIREという生き方が物議を醸していた。資産運用からの収益だけで生活できるように設計し、積極的に仕事はしないというものである。一部の人の中では「仕事は悪」という考えが根底にあり、人生から仕事を完全に排除することで幸せをつかもうというものである。
しかし、人間の価値観はそう単純な生き物ではない。セミリタイアが地獄の入り口である事例は過去にいくつも取り上げられている。
たとえば筆者が知っている事例ではFIREで暇を持て余した結果、やることがない虚しさと社会から切り離されている感覚に苦しんでいる人物がいる。彼は朝からずっとアルコール漬けでなければ正気を保てず、夜になるとベッドの上でひたすら泣き続けるといった不安定な精神状態である。
その他にもFIRE後にやたらと世の中に否定的になり、政治や社会に対して不満を垂れ流し、外食では店員さんに「早くもってこい」「底辺の仕事だな」と怒ったり蔑んだりと、人格の劣化が著しい事例もある。
仕事は金銭を得るだけの行為に留まらない。顧客を満足させることで相手から頼りにされたり、感謝されたりするというメリットは計り知れないし、これらはお金で買うことはできない。件のマクドナルド店員に「運動ならジムへいけばいい」という反応も「仕事の強制力を活用して、運動ルーチンを構築している」という人間心理を見落としていると感じる。
筆者は日々、必死に勉強したり仕事をしているのは「自分が知識とスキルを仕入れて提供し、お客さんに喜んでもらいたい」という純粋な気持ちからである。必死に努力することは大変である反面、規則正しい生活を維持でき、頭も快調によく動く。朝から夜までテレビの番人の生活は、ボケ老人の入り口なのだ。
セミリタイアで人間性が劣化する人は少なくない。仕事には人間が文化的に人生を楽しく生きるのに必須な要素が詰まっている。これを切り離してしまうリスクは計り知れないだろう。