自然のポテンシャル、早期の努力等、各国の異なる事情に即し、各国の国情に応じた既存の目標、政策を通じて2030年までに世界の再エネ技術の設備容量を3倍にするという努力に対する我々の自主的貢献の重要性を認識しつつ、再エネ導入を加速し、電力システムのフレキシビリティに取り組み、再エネ導入を阻む障壁を除去し、コストを引き下げる必要がある。緩和・除去を含む他のゼロエミッション、ネットゼロ技術に関しても同様の野心が表明された

とされた。

「世界の再エネ導入設備容量を3倍するという努力に向けた我々の貢献」であるから、G20としての導入目標が設定されたわけではない。G7広島サミットにおいて「2030年までに洋上風力150GW増加、太陽光パネルを合計1TWにする」という数値目標を掲げたのに比べると抑制的な表現となっている。しかも再エネ以外の技術の重要性についても言及されている。

昨年のCOP27の合意文書において当初案では再エネの拡大のみが強調されていたが、産油国等の反発により「国情と移行への支援ニーズに則ったエネルギーミックス、システムの多様化の一環として低排出で再生可能なエネルギーを含むクリーンエネルギーミックスの重要性を強調」という表現で決着した経緯がある。

G20における議論は12月のCOP28の前哨戦ともいえる。

議長国UAEは、

① 2030年までに再エネ設備容量を3倍 ② 2030年までにエネルギー効率を2倍 ③ 2030年までにクリーン水素を2倍 ④ 排出削減対策を講じていない化石燃料火力のフェーズダウン

というグローバル目標を合意したいとしている。世界全体の目標というのは各国の責任をあいまいにするので比較的合意しやすいのではないかと思っていたが、G20の議論を見る限り、少なくとも④については議論が紛糾することは明らかだ。

興味深いことにG20エネルギー移行大臣会合の合意文書・議長サマリーには1.5℃目標やグラスゴー気候合意に対する言及がない。あるのは「パリ協定及びその温度目標の実施」、「今世紀半ばまで、あるいは半ば頃(by or around mid century)のカーボンニュートラル」という過去のG20で合意された文言である。

グラスゴー気候合意で1.5℃目標を特筆大書した先進国に対する新興国・途上国の反撃がますます強まっていると見るべきであろう。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?