起業して役に立たないサラリーマン経験
その逆に起業しても役に立たないサラリーマン経験もある。
それは売上や仕事の進め方についての考え方だ。たとえば一部のサラリーマンにおける売上のほとんどは「足し算」による考え方だ。たとえば商品サービスを販売する場合は、一人一人潜在顧客と面談をして丁寧に説明して売っていくというイメージである。売上を10倍作るなら、10倍の数の見込み客に販売する必要があるので、それには10倍の営業する時間が必要という感覚だ。
しかし、起業して一人社長やフリーランスになると「掛け算」としての考え方が必要になる。たとえばブログ記事やYouTube動画で自社商品やサービスの魅力を訴求するコンテンツを作れば、記事や動画を見た視聴者から売上が上がるようになる。今日日、ラーメン屋や結婚相談所、筋トレ教室などあらゆる企業でこのようなマーケティングをしているのを見かける。
この場合、動画が100再生と1万再生とではシンプルに売上が100倍UPする事がありえる。しかし、100回再生の動画を上手にハンドリングすれば、100倍以下の労力で1万回再生、つまり100倍の売上を作ることが事が可能なのだ。
だがサラリーマンをやりながらこのような掛け算的な売上を作るマーケティング力が必要な立場の人は極めて少数派であろう。サラリーマン時代に一人ひとりと上手に面談をして売上を作る力に長けた人物でも、起業して同じ売り方では時間の切り売りのようになってしまう。すぐさま持ち時間の限界値を迎える。
最大の違いは「時間の感覚」これは役に立つ、立たないという次元ではないが、ついでにいうとサラリーマンと自営業者との最大の違いが「時間に対する感覚」である。自分自身、これが最も変化があったと感じる。
サラリーマンは会社で勤務すれば、とりあえず給与が入ってくる。つまり、お金は働く時間を使えば確実に会社から受け取れるものという感覚なのだ(自分もそうだった)。しかし、起業するとお金は創意工夫やアイデア、行動力や時間という経営資源を投じて増やすという感覚になる。結果、「Time is money」が骨の髄まで染み渡るような感覚へと変わる。
筆者がサラリーマンだった頃、勤務時間中なら多少つまらない時間の使い方をしても気にならなかった。たとえば財務経理部の時は銀行をいくつか巡って通帳記帳や収入印紙を購入して回る際、行員と雑談したりちょっとくらいコンビニに寄っても気にならない。勤務時間中なら多少ムダな行動をしても受け取る給与に変化はなにもないからだ(かといってすごくサボるわけにはいかないが)。
しかし、起業して特にクライアントワークが中心の人では、極端に時間にケチになる人は少なくない。友達と雑談をしている時や、ダラダラテレビを見ている時に「この時間、仕事にあてたらもっと収入を増やせる」とまるでお金を捨て続けているような感覚になるのだろう。
自分はそこまでではないが、サラリーマン時代と比べてムダな時間は避けるようになったのでかなり時間にケチになったかもしれない。多少お金をムダに失ってもそこまで気にならなくても、ムダな時間を使わさせられることは辛い。具体的に言えば、飛び込み営業の訪問や突然の電話営業をさせられることにはかなりのストレスを感じてしまう。
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いつか起業したいと考えている人は長くなくていいからサラリーマン経験は多少はしておいても損はないと思っている。自分自身はサラリーマン経験があってよかった。そのおかげで学べたことは決して少なくなかったのである。
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