医療データビジネスが急拡大する予感

医療データの利活用を取り巻くルールは、変更に向けて今年議論が大きく動く可能性があります。日本は国民皆保険や医療提供体制の整備により、多くの医療データが蓄積されています。

このうち医療機関が医療費の請求に使うレセプトについては、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)の活用が研究分野で進んでいます。医療機関で処方された医薬品の種類 、受けた治療の内容などが記録されているため、患者の受診行動の分析に活用できるのがNDBの強みです。一方でレセプトに記録されていない検査値などのデータはこれまであまり活用されてきませんでした。

活用の方法として、個人が複数の医療機関にかかったり、診察した医師が過去の診察情報が必要と考えた場合に、検査値などの医療データを関係する医療機関の間で共有すること(このような活用方法を「一次利用」といいます)が考えられますが、そのために必要な患者の同意取得に手間がかかったり、情報セキュリティへの不安があったりするため、効率的な活用がされていません。

また、患者の医療データを(必ずしもその個人のためではなく)、医薬品などの開発や研究目的で利用すること(このことを二次利用といいます)も技術的には可能であり、医療の進歩に貢献できるものですが、データの収集は個別の医療機関と契約して行うケースが多いため、検査値を含むデータベースが海外に比べると小規模であり、また、そもそも医療機関にとって検査データなどを外部提供することのメリットが見出しにくいという事情もあることから、こちらもあまり進んでいません。

このような状況を一変させる可能性のある制度改正が今年以降行われようとしています。

metamorworks/iStock