支店長になれるのは3人に1人? 天下りで年収が下がる

 メガバンクは出世競争も苛烈だ。

「メガバンク行員の最初の目標は支店長になることです。一昔前は、東大、京大卒の社員であれば、順当にキャリアを積み重ねていけば、支店長になることは比較的容易でした。また役員になってしまえば、取引先の大企業に天下りして穏やかに定年まで過ごせることも珍しくなかったのです。しかし現在では、それが難しい状況になっています。

 なぜなら支店数の減少によって、ポストの奪い合いが起こっているからです。たとえば、現在の三菱UFJ銀行は、国内外合わせて580店舗まで減ってしまっているのに対し(2022年3月末現在)、23年度の新卒採用数は400人程度もいます。支店長の任期を4年と想定した場合、ライバルは1600人となるので、3人に1人ぐらいしか支店長になれない計算で、競争はよりシビアになってしまいました。また、仮に支店長になれたとしても、そこから先の役員への出世の枠は当然さらに限られてくるのです」(同)

 ますます先のキャリアが見えてしまい、出世のモチベーションも消えていくというわけか。

「50代前後ですでに出世が見込めない行員になると、『たそがれ研修』といって大企業以外の取引先へ天下りする準備を始めます。天下り後、2年間はもともとの給料を銀行側が補填してくれますが、3年目以降は天下り先の企業の水準へと変更になり、年収がガクッと落ちることもよくあります。それでも年収800万円前後というケースが多いため高給であるには変わりませんが、それまでのキャリアを考えると心理的なダメージは大きいでしょうね」(同)

 若者の意識が変わり、メガバンクの印象も変わりつつある現代。だが鈴木氏は、長期的に見ればメガバンクの人気は少しずつ下がるといえるが、一気にその価値が暴落することはないと分析する。

「価値観が変わってきたとはいえ、メガバンクが有力な就職先であることは間違いないです。かつてはサービス残業も常態化していましたが、働き方改革の影響で労働環境も改善されつつあるので、遅くまで仕事で残らなくてはいけないということも少なくなっているはず。また自分の意見が通らない職種ですが、裏を返せば作業を淡々とこなせる人にとっては向いている職場であることを意味します。ですから黙々と仕事を進めることが得意な学生にとっては、まだまだ魅力的な就職先ではないのでしょうか。

 仮に退職することになっても、メガバンクは社会的ステータスが抜群に高いので、転職活動でも有利に働くことは間違いなし。定年まで働こうと考える人は減っているでしょうが、ひとつ目のキャリアとしてはメリットが大きく、損はない就職先だと思いますね」(同)

 いまだにメガバンクは多くの学生たちが志望する人気企業だが、定年まで身を捧げるという覚悟で出世を目指す社員は減り、若い世代ほど自身のキャリアのファーストステップ程度にしか考えていないのかもしれない。

(取材・文=A4studio、鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

提供元・Business Journal

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