複数の大手日本企業がシニアの処遇改善に踏み切るとのニュースが話題となっています。SNSで上位トレンド入りしたので、関心のある層が多いんでしょう。

【参考リンク】60代社員を現役並み処遇 人材確保、住友化学は給与倍増

60代といえば「あのさあ、年金払う余裕ないから企業で面倒見てよ」と政府に一方的に押し付けられた世代です。

そんな人たちの処遇を抜本的に見直すという報道に驚いた人も多いはず。

何が企業を動かしたのか。企業の狙いはどこにあるのか。いい機会なのでまとめておきましょう。

とにかく人手が足りない企業、選択肢は2つあったが……

現在、一般的な日本企業の年齢構成というのは、50代半ば~60代前半が最大のボリュームゾーンとなっています。幸運にも80年代半ばから91年の間に世に出ることのできたバブル世代ですね。

(それまでも十分多かったのに)「例年の2倍以上の新卒採用枠」が卒業と同時に口を開けて待っていて、豪華クルーザーでの内定懇親会とか海外旅行研修とかやってた世代です、はい。

会社に丁度その年代で全然聞いたことが無い大学出のオジサンがいたら、時代の生んだあだ花、歩く不良債権みたいな希少種なので泣きながら手を振ってあげてください。

で、そのちょっと下の世代、40代半ばから50代前半は逆に非常に頭数が少ないのが一般的です。いわゆる氷河期世代という奴ですね。

つい最近「昔はいい大学出の優秀な人材が大学卒業後もフリーターとして残ってくれたから安く使い倒せた良い時代でした」っていうコンビニオーナーの独白が話題になってましたが、それだけ企業が正社員採用を絞っていたということです、はい。

【参考リンク】1店舗残して閉店したコンビニオーナーの告白「働く人が本当に集まらない」

本来であれば毎年前年比+αの数を安定して採用し、年齢別にみるとなだらかなピラミッド型になっているのが年功序列型組織にとっては理想なんですが、実際問題として終身雇用のせいでこうなっちゃってるわけです。

一度雇ってしまったらクビに出来ず、雇用調整ツールとしては新卒採用を絞る以外にないからですね。

筆者の記憶だと日本企業が一番新卒採用採っていたのは91年入社で、それまで年100人採ってた会社だと300人くらい普通に採ってましたね。

それが93~94年には「新卒採用見送り」とか普通にやってましたから。

まとめると、多くの日本企業というのは終身雇用制度のせいで非常にいびつな年齢構成になっているわけです。

そして、現行制度のもとでは60歳でいったん定年し、その後は嘱託として再雇用され給与はほぼ半減するのが一般的です(定年が65歳の企業もやはり給与水準は減るケースが多い)。

つまり、企業内の最大のボリュームゾーンであるバブル世代は、もうすぐ給与半減の超絶消化試合モードに突入することが確定しているわけです。

「同じ仕事なのに給料半分にされたらやる気なんてなくなるよ」という人がほとんどじゃないでしょうか。

やる気なくなった彼らバブル世代の穴を誰が埋めるのか。当たり前ですが少子化の進む今、新卒採用数を増やすのは至難の業でしょう。実際には大手であっても採用枠を埋められない企業が多いのが実情です。