企業固有の事情によって、企業年金が人事処遇制度として有効に機能することもあれば、そうでないこともある。また、制度設計と維持管理のやり方によって、企業年金の機能を十全に引き出すことも、逆に、企業年金に本来ある機能を破壊することもある。要は、企業年金を人事処遇制度として活かすことができるかどうかは、経営能力の問題なのである。
そこで、まずは、企業年金のもつ人事処遇戦略上の機能の理論的側面を明らかにし、そのうえで、その機能が有効に働く場面を検討する必要がある。論点は極めて単純かつ明瞭である。要は、企業として、従業員とは付加価値を創造する資産なのだと考えるかどうかに帰着するのである。
企業にとって、人的資源が資産ではなく単年度の確定費用として使い切られるものならば、企業年金は不要である。逆に、人的資源が長期的に価値を創造する資産であると考え、しかも時間の経過とともに熟練によって資産価値が増すと考えるのならば、企業年金は不可欠といっていいほどに重要なものになるわけだ。
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森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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