波瀾万丈のドタバタ劇が開幕・・・

2023年6月28日(水)10:35、いよいよ第1ヒートがスタート。スタートはローリングスタートで、筆者はまず1周目でスタートダッシュすることに成功する。しかし、このレースでは序盤でガソリンを使いすぎて、最後にガス欠をしてはまったく意味がない。「ウサギとカメ」の童話ではないが、「速く走る」ことはこのレースでは重要ではなく、「燃費良く速く走る」ことが重要なのだ。
ちなみにロードスター4耐の昨年の結果を見てみると、優勝チームは182周(筑波サーキット1周2045m)で、ガソリン量は60Lなので、平均燃費は約6.2km/Lで走っていたことになる。対してマス耐は昨年の優勝チームで約9.1km/Lなので、ロードスター4耐に比べて約47%もエコランをしなくてはならないことになる。これだとアクセルが踏めずにストレスが溜まるだろうなぁと思って走り始めたのだが、目標燃費とラップタイムをクリアするためにどういう回転数で走ればいいのかを考えて走っていると、まったく退屈なわけがなく、むしろずっと集中して走らなければならないため、走っていてとても楽しい。
と、頭を使いながら一生懸命走っていると、6周目に事件が起こった! このレースでは、市販のケータイ電話を使って、ドライバーとピットで通信することができるのだが、つながっていた電話が切れてしまったのだ!(泣) ドライバーはピットにメーターに表示される燃費を1周ごとに連絡して、ピットはその情報を元にコンピュータで計算。ペースと走り方の指示をしている。切れたら掛け直せばいい話なのだが、筆者のケータイには、自動着信(オート応答)機能が付いていなかった!(焦) せっかくトップを快走していたので、そのまま予定の周回数を走るということも考えていたのだが、ピットのY氏から「P(ピットイン)」のサインボードが提示された。仕方なくピットに戻ることにした。
ピットに戻ってケータイをつなぎ直してコースに戻ると、せっかくのリードは帳消しになったどころか、最下位まで転落してしまった(涙)
しかし、この後は燃費と速さをバランスさせる走り方が徐々にわかってきて、ペースアップ。23周を走り終わったところで、Y氏にバトンタッチする。

Y氏は筆者が伝授した走り方を忠実に守り、淡々と燃費と速さをバランスさせながら周回していき、再度トップに返り咲くことに成功!
しかし、好事魔多しとはよく言ったもので、コントロールタワーからCDロードスターに「オレンジボール」の旗が提示されている。なにが起こっているのか、ドライバーに聞いてみたが、「クルマはとても順調ですよ」との応答が。とりあえずピットに戻ってくると、すぐにその原因がわかった。ゼッケンが剥がれかかっていたのだ。すぐにガムテームで応急処置をし、すぐにコースに戻ったが、今度は2位に落ちてしまった。トホホ…。
その後、岡本氏にドライバー交代。岡本氏も筆者から伝えられた運転の仕方をきっちりと守りながら、燃費をキープしながらいいペースで周回を重ねる。そして、20周を走って第1ヒートトータル72周を走行、終わってみれば2位となんと2周回差のトップでチェッカーを受けることができた。

第2ヒートは、第1ヒートとは逆、岡本氏→Y氏→筆者の順で走ることにする。14:00にレースがスタートすると、いきなり問題が発生!
第1ドライバーの岡本氏は、「スタート時は自分がいたスターティンググリッドボックスの列上を走らなければならない」というレギュレーションをすっかり忘れ、コースのど真ん中を走ってスタートしてしまったのだ! さっそく次のコントロールライン通過時には、ピットスルーペナルティの黒旗が掲示されてしまった! ピットから岡本氏には「反則スタートなので、次の周にピットスルーしてください」と告げると、岡本氏からは「ごめんなさーい」という、なんとも力のない返事が返ってきた…。
しかし、このピットスルーペナルティでは、第1・2ヒートトータルでのトップはまだ変わらなかったので、岡本氏には落ち着いて淡々と走るように指示する。本人もその指示にしっかりこたえて、燃費をセーブしながら着実にタイムを稼いでいく。
そしてY氏にドライバー交代してからの走りが圧巻だった。平均燃費を変えることなく、じわじわとタイムを上げていったのだ。このタイムなら引っ張った方がいいという判断で、ピットからは一人で35周(約1時間)走るようにロングランを指示する。Y氏は結局、燃費を下げることなくタイムも正確に刻み続け、最終ドライバーを務める筆者にバトンタッチ。
すでに2位のENGINE号とはトータルで4周差があったので、筆者がムリをする必要はまったくなかった。ガソリンも想定より余っていたので、終盤にはファステストラップを狙って全開アタックを決行!本当はファイナルラップにファステストラップを出してチェッカーを受けたかったのだが、ちょっとヒヨってしまい、チェッカーの3周前にファステストラップを計時。その後はペースを一気に落として、第2ヒートも72周、トータルで144周でトップチェッカーを受けることができた。

昨年の優勝者150周には遠く及ばないが、思い返せば、ケータイ通話切れ、ゼッケン剥がれ、反則スタートと、3回も余計なピットインをしたのにもかかわらず、最終的に優勝することができたのは、燃費をキープしながら、淡々と決められたペースで3人が走ったからこそ。エコランレースだから面白くなかったということはまったくなく、むしろ4時間にわたってピットとドライバーが緊張感を持ちながらレースできたことは、ロードスター4耐に向けて非常にいいシミュレーションができたのではないかと思っている。

ちなみにこのマス耐、次は2023年12月6日(水)に袖ヶ浦FRWで開催されることが決定している。メーカーの垣根なく、いろんなタイプの車種が参加して、どれが一番燃費良く速く走れるのかをガチンコで勝負するのは、間違いなく面白いことだと思う。CDロードスターも参戦予定なので、興味がある方は参戦してみては。
ビースポーツ マスターズ・エンデュランス
提供元・CAR and DRIVER
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