クラウンらしい完成度はさすが。エンジン音と乗り心地の磨き込みに期待
横基調で立体的な造形のインテリアは新鮮だ。インフォテインメント系も充実していて、メーターパネルにはさまざまな情報が表示できる。ただし先進的ではあるが、やや直感的に操作できない部分も見受けられる。ユーザーによっては使いこなせるかどうかという不安もある。
室内は狭くはないが、格別広いという印象も薄い。エンジンの横置き化により後席の居住性は向上しているはずだが、実はホイールベースは従来よりもだいぶ短くなっており、シートのサイドサポートも張り出している。ウィンドウ形状が後方にいくほど絞り込まれている点と、後述する乗り心地もあって、ショーファードリブン用にはあまり向かない気がする。それでも、サイドシル形状は工夫され、足を出し入れする空間を広く確保するなど乗降性は入念に配慮されている。
インテリアの質感はまずまず。クラウンとしていま一歩という声もあるようだが、個人的には気にはならなかった。むしろ要望したいのはエンジン音の洗練だ。けっしてノイジーなわけではなく、静粛性自体は高い。ただ、横置きされた4気筒エンジンの高級感に乏しい音と振動が、比較的キャビンに伝わってきやすい。クラウンとしてどうかというよりも、この車格のセダンとしては、もう少しリファインしてほしい。そう感じるユーザーは少なくないように思える。
パフォーマンスは十分。RAV4などで経験を積んでいる2.5リッター+モーターの新世代ハイブリッドの完成度は高い。動力性能は優秀。従来システムとは比べものにならないほど低速域でのレスポンスがリニアになっている点がうれしい。扱いやすく、アクセルを踏み増したときも力強い。これには大電力を瞬時に出し入れできるバイポーラ型ニッケル水素電池をアクアより増量して搭載したことも効いているに違いない。実燃費は28.3km/リッターと驚くほど良好だった。使用燃料がレギュラーガソリンである点も歓迎できる。クラウンの走りは絶対的なパワフルさこそ希薄だが、キャラクターに合っている。
乗り心地は全体的にやや硬め。Gアドバンストでは19インチタイヤが標準となるが、足回りは運動性能を重視して開発されたようだ。後席は前席とだいぶ印象が違って、路面の凹凸が比較的ダイレクトに伝わってくる。路面のきれいな道ならまだしも、荒れたところを走ると、クラウンならではの快適性を望むユーザーから不満が出そうだ。
一方で、ハンドリングの仕上がりには感心した。ターンインで応答遅れなく素直に回頭するほか、コーナリングではニュートラルステアを維持し、ハンドルを戻したときの揺り戻しも小さく収まりがよい。自然な仕上がりで、駆動方式を意識させられる場面はない。
FFベースではあるが全車4WD(E-Four)であり、その制御を工夫するとともに、DRS(ダイナミックリアステアリング)やACA(アクティブコーナリングアシスト)といった先進デバイスを用いてハンドリングの向上を図ったことが功を奏している。
開発関係者は、FFベースに変更したことをとやかくいわれるのが、最もイヤだったのだろう。それゆえ、まずは走りのよさをアピールするクルマに仕上げたことは納得できる。将来の改良時には、おそらくこの走りを維持あるいはさらに洗練させたうえで、乗り心地をリファインするに違いない。ハンドリングは現時点でも高水準に達している。
通知表/クラウン・クロスオーバーGアドバンスト 価格/510万円
総合評価/77点
Final Comment
スポーティな造形にふさわしいハンドリング
インフォテインメント系と安全機能はトヨタ最新
Gアドバンストは最上級グレードではないが、装備は充実している。走りは完成度が高い。乗り心地こそ改善点があるものの、この優れたハンドリングならば納得できる。動力性能はリニアで、扱いやすい。燃費のよさにも驚いた。同じコースを複数回走って同様の結果となったので、本当に実力が高いと認識していい。インフォテインメント系は使いこなすのが大変なほど多彩な機能が用意されており、先進運転支援装備も現時点で考えられるものがフルに搭載されている。