暮らしをアップデートするウエルネスビジネス

また、医療やヘルスケアの分野にとどまらず、多様な業界に属する企業が参加していた点も、今回のイベントならではの光景でした。

空間企業として参加した西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)は、『長引くコロナ禍の影響もあり、従来の鉄道事業だけでなく、生活を支えるビジネス展開にも力を入れていく必要があります。インフラ企業として、健康長寿社会に貢献し、Well-beingな暮らしを提供する。そうした考えのもと、さまざまなパートナーと一緒に取り組めるきっかけにできれば』とイベント参加の意図を明かしました。

同社の発言からもわかるように、ウエルネス関連のプロダクトは、日常のさまざまな場面で私たちの暮らしと関わってくるものです。

たとえば、株式会社CyberneXが開発する「脳波を測れるイヤホン」は、耳から取得した脳波から、リラックスや集中といった脳の状態を可視化して、独自のサービスへと応用しています。

自社で運営するリラクゼーションサロンで、施術を受けているユーザーがどんな状態なのかを分析し、その情報を見たセラピストが施術の具合を調整するといった活用をおこなっており、今後は他企業の商材を利用した際のリラックス度やストレス度の測定にも活用の幅を広げる考えです。

CyberneXが開発するイヤホン型の脳波測定デバイス


また、指の静脈で個人認証を行う「血流認証スマートロック」を開発するバイオニクス株式会社は、住宅市場向けに新たな付加価値の提供を検討しています。

『血流認証とあわせてバイタルデータを取得する技術を開発しています。玄関の鍵を開けると同時に体の状態をスキャンすることで、毎日の暮らしの中で簡単に体調をチェックできます。手軽な健康管理を通じて、健康寿命の延伸に貢献したいと考えています』とコメントを寄せました。

バイオニクスが開発する血流認証スマートロック「AQUBIO」

関西発「未来のウエルネス」を実現するきっかけに

イベントでは、ウエルネスビジネスに関するトークセッションも多数実施


昨今、各地で「スマートウエルネスシティ」の構築に向けた取り組みが進んでおり、健康で幸福度の高い暮らしに貢献するウエルネスビジネスは、期待の大きい分野だと言えます。

そうした背景も手伝い、今回のイベントは熱気に満ちており、今後ますます市場規模が拡大することを予感させる魅力的なコンテンツが数多く見られました。

とくに、バイタルデータを活用して身近なサービス領域をアップデートする取り組みは、「未来のウエルネス」がどのような姿となるのか、イメージを大いに膨らませるものでした。

その一方で、ウエルネスビジネスの市場が、今後大きな成長を遂げるためには、会社の規模や業界の枠組みを超えた連携が必要になることを、多くの企業が指摘していました。その意味では、今回のイベントが、垣根を越えたパートナーシップを生み出すきっかけとなるかもしれません。

関西発のウエルネスビジネスが、日本さらには世界を巻き込むうねりを生み出すことができるのか。今後の動向に要注目です。

(取材/文・和田 翔)