株主優待が多くの投資家に注目され始めている。株主優待は、食品、生活用品、金券、施設利用券からクオカードまで幅広く企業からお礼の品としてもらえる制度だ。

株価チャートや財務分析を勉強しなくても気軽にできる投資の方法として、特に初心者の投資家から人気だ。ただ、優待株(優待を実施している企業の株式を優待株という)を買うタイミングに無頓着だと、思わぬ高い値段で株を購入する羽目になってしまう。

優待株の値動きには傾向があり、その流れをつかんでおくことでタイミングよく株を仕込むことができる。本記事では、優待制度の基本と同時に、仕込むタイミングの目安について解説していく。

優待を取得するための権利確定日とは

株主優待は単に株を持っているだけではもらうことができない。企業ごとに、優待をもらう権利を付与する日(権利確定日)を定めていてその日をまたいで株を保有している必要がある。権利確定日は一般的に月末である場合が多く、権利確定日に株を保有していれば優待をもらうことができるのだ。

つまり極端な話、優待をもらうには株を持っている日は、権利確定日の1日だけでも良いということになる(保有期間の制限ありなどの条件付きでない優待株の場合)。

そのため、なぜか優待株には権利確定日の数か月前から株価が徐々に上がり始めると同時に、権利確定日を通り過ぎると株価が大きく下がる(売られる)という傾向がある。

何も知らないで権利確定日直前に買ってしまうと、一番高い株価をつかんでしまうことになる。できる限りタイミングよく買うには、優待株のサイクルを把握して、購入することを考えたい。 

権利確定日が年2回の場合 買いタイミングは2か月前

まず前提として優待は年1回の企業もあれば、年2回以上の場合もあることを知っておこう。同じ利回りでも、年1回の場合と年2回の場合とでは権利日を通過した後の下落の大きさは異なるのだ。

例えば飲食店の優待ポイントとして人気のダイヤモンドダイニング <3073> とアトム <7412> 。

ダイヤモンドダイニングは2月末で年1回、4000ポイントが食事用として付与される。一方でアトムは3月と9月の末にそれぞれ2500ポイント(年間5000円)が食事用として付与される。

一見すると年間ベースでの優待金額はアトムの方が高いため、権利日通過後の下落はアトムの方が大きいだろうと思える。しかし、1回あたりの優待金額でいえばダイヤモンドダイニングの方が大きいため、通過後の権利落ちはアトムよりも大きくなる。

権利落ちは株価の下落を意味する為、場合によっては優待で取得できる優待金額以上に、株価の評価損失が発生する場合がある。そのため、優待株を買うタイミングが重要になるのだ。 

年1回の優待は半年前を目安に

内容も種類も利回りも千差万別の優待であるため、確実な買い時というものはそもそも存在しない。しかし、一応の目安として年2回の優待に関しては2か月前を目安に仕込むことを念頭に置いておこう。年2回、例えば3月と9月に権利日があるとしたら、1月と7月を目安に株を仕込むとよいだろう。

ただし、年1回の優待の場合には、下落幅が大きくなる上、調整時間(下落が収まり再び上げ始めるまでの時間)が年2回のものとは異なる。目安として権利日通過ののち半年から8か月程度は見ておき下落が収まって株価が再び上昇を始めたタイミングで仕込みたいものだ。いずれにせよ権利確定日の直前に買うことだけは避けた方が良い。

なお、最近ではクロス取引(優待ただ取り)の影響からか株価が権利日を過ぎてもそれほど落ちない優待株も散見される。優待銘柄も種類やクロス取引がしやすいかどうかによって、権利日通過後の株価の動きもいろいろなので、興味を持ったならその辺りを研究してみると、一歩上の優待投資家へと近づくことだろう。 

知っておくと便利! 権利落ちしにくい優待株

参考までに権利落ちしにくい優待株があることをお伝えしておく。それは時価総額の大きな優待株である。

例えば、大和証券グループ本社 <8601> やオリックス <8591> 、レオパレス21 <8848> などは機関投資家や外国人投資家なども買っているような大型の株式である。彼らは優待目的には株の売買をしていないので、優待取得にかかわらず株を保有し続ける。そのため優待投資家の権利確定による株価の下落の影響を受けにくいのだ。

それに比べると純粋な時価総額の小さな優待株は、優待権利確定通過による下落の影響をもろに受けるため、優待初心者の場合には、まずは大型から攻めてみるのもありかもしれない。これも参考までに覚えておいてほしい。

文・谷山歩(たにやま あゆみ)/ZUU online

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