自動車にバイク、自転車に歩行者と、道路上にはさまざまな交通主体が行き交っています。それぞれの速度や視点はまったく異なり、そのギャップが危険な状況につながるケースも少なくありません。
とりわけ近年では、免許なしでスピードを出せる自転車の危険性に対して社会的に注意が向けられており、車道通行の原則やヘルメット着用の努力義務化など、規制強化の動きも見られます。
実際に、自転車が引き起こす危険にはどのようなものがあるのでしょう。今回は、ドライバーの方々に「自転車の動きにヒヤッとした経験」について話を聞きました。
目次
おじいさん自転車がフラついて車道の中央に……
大胆すぎる「ながら運転」にヒヤヒヤ……
おじいさん自転車がフラついて車道の中央に……
自転車に乗る際のルールとして「車道通行の原則」が周知徹底され、今では自転車が車道を走ることがスタンダードになりつつあります。自転車に対する歩行者の安全を鑑みれば、自転車の車道通行は妥当なルールといえそうですが、一方で「車とバイク、自転車が入り乱れる車道側の危険は増したのではないか」という声も頻繁に聞かれます。インタビューでは以下のような体験が聞かれました。
「私の前を走る車が、危うく自転車に乗ったおじいさんを轢きそうになったことがありました。
視界に入ったときからフラフラ運転していて『怖いな』と思っていたのですが、おそらく道路を横断しようと思ったのか、ちょっと右に寄りながら、右手を横に伸ばして、それから後ろの方を確認したんですね。
でも、後ろを見たときにはもうかなり道路の中央に寄っていて、車が接近している状態でした。おじいさんは驚いてハンドルを戻そうとしましたが、バランスを崩して転んでしまって。前の車は思い切り対向車線にはみ出しながら、どうにか轢かずに去っていきました。
倒れたおじいさんは車線の半分くらいを埋めてしまっていて、そのままでは危険そうだったので、路肩に止めて声をかけましたが、どうにも放心状態というか、『はぁ、あぁ』みたいな声をあげるばかりで……
結局、なんだかよくわからないまま、また立ち上がって自転車に跨がり、とくにこちらには言葉を残さず行ってしまいました」(40代女性)
自転車は子どもから高齢者まで幅広い年齢層に利用されており、乗り手の認識能力や運動能力にも差があります。車を運転している際に自転車を見かけたら、予想外の動きに注意を払いつつ、速度や間隔に余裕をもって対応したいところです。
なお、自転車の車道通行のルールには例外が定められており、13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、身体の不自由な人が運転する場合には歩道を通行することができます。こうしたルールをふまえ、自転車側も危険を避けるための意識を十分にもっておくことが大切です。
大胆すぎる「ながら運転」にヒヤヒヤ……
自転車は多くの人にとって、小さな頃から使っている「もっとも身近な乗り物」です。しかし、操作に対する油断が「ながら運転」につながる場面もしばしば見受けられます。
「スマホ片手に乗っている自転車はよく見ますが、この前広い国道の緩い下り坂を運転しているときに、後ろに子どもを乗せた親が電話をしながら運転しているのを見かけました。下りなので車の流れも速いのですが、まったく気にしていない様子で、その自転車の方もかなりのスピードが出ていたと思います。傍から見ているだけでヒヤヒヤしてしまいました」(20代男性)
自転車での「ながら運転」は、各都道府県の公安委員会の定める規則によって禁止されており、たとえば大阪府道路交通規則においては違反した場合の罰則として「5万円以下の罰金」が定められています。
さらに、合図を出すとき以外の片手運転は、危険な状況を引き起こしやすいため避けなければいけません。
「片手で傘をさしている自転車が、風に煽られてフラっと真ん中の方に出てきて、『危ないな』と思った経験が何度かあります。もちろん警戒はしていますが、突然動きが変わったりするので、フラついている自転車は抜くのが大変ですよね」(20代男性)
傘をさしての運転など、視界を確保できない状況での運転や、安全な姿勢を保てない状況での運転は、都道府県公安委員会規則によって禁止されており、5万円以下の罰金などが科される可能性があります。
「歩いているときと同じ調子」で自転車に乗ってしまっている人も多く見られますが、自他を危険に巻き込むリスクについて責任をもち、安全運転に努めたいところです。