国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が6月14日、公表した年次報告書「Global Trendsレポート2022年」によると、今年5月末時点で世界で推定1億0840万人の難民、国内避難民がいる。前年比で1910万人が増え、過去最高を記録した。ウクライナ戦争やスーダンでの軍部指導者間の紛争で多くの避難民、難民が新たに発生している(「地中海で2万人以上の難民が犠牲」2023年6月17日参考)。
なお、欧州に殺到する不法移民、難民は大きくは2つのルートがある。第1はシリア、イラクなど中東からトルコ経由、バルカン・ルートを経て欧州入りするケース、第2はスーダン、リビア、チュニジアから密航船に乗ってイタリアに入国するケースだ。
欧州では2015年、中東から難民・移民が殺到した時、トルコから海を渡ってギリシャに殺到するシリア人難民対策問題で、EUはトルコとの間で2016年、今回のチュニジアと締結したような合意書を結び、トルコ政府に経済支援をする一方、トルコはシリアからの難民を収容することで合意した。
EUとトルコ間の合意内容は過去、トルコ側の事情で履行されないことがあったが、トルコのエルドアン大統領と同じように権威主義的傾向が出てきたサイード大統領がEUとの合意内容を完全に履行するか否かは現時点では不確だ。いずれにしても、北アフリカからの大量の難民を防ぐためには、EUは密航船の拠点となっているチュニジアの難民対策に期待を寄せる以外にない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年7月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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