企業年金の資産運用が企業経営にとって重要であるからこそ、「コーポレートガバナンス・コード」は、具体的な行動として、そこに経営資源、即ち専門的能力を有する人材を投入すべきだとしているのである。ここには、経営資源を投じることで、資産運用から得られる利益が増加すれば、企業価値が上がる、即ち、その費用よりも創造される付加価値のほうが大きいとの自明の前提がある。
これは、資産運用で儲けろということではなくて、企業年金の資産運用の本質からして、専門的知見のもとで適正な資産運用を行う限り、適正な投資収益を合理的に期待できるということである。しかし、多くの企業経営者は、資産運用の否定的側面、即ち、損失発生の可能性や、実質的な損失にはならないまでも、一時的な資産時価の下落が企業経営に与え得る影響に対して、懸念を感じるであろう。おそらくは、故に、この問題に対する企業経営者の関心が低いのだと想像される。

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「コーポレートガバナンス・コード」には、「従業員の安定的な資産形成」への言及があるが、企業年金が確定給付企業年金だけを指すのならば、その運用成果は給付額と無関係だから、この言及の意味が不明になるが、確定拠出企業年金を含むということならば、従業員に対する適切な投資教育や投資対象の選定において、企業の果たすべき責任が重大であることをいっていると考えられる。