読後の感想
読んで驚きはない。「自由貿易時代の終焉」は、5G通信に始まり、チップの貿易制限に広がって、いまや補助金政策もやりたい放題だ。
TSMCの創始者・張忠謀は昨年末アリゾナ工場建設の式典で「自由貿易はほぼ死んだ」と述べたそうだが、同感だ。
「死んだ」は言い過ぎでは? と思う人もいるだろうが、WTOに象徴される自由貿易体制の真骨頂は「ルールに違反すれば是正させられる」点にあるがそこが死んでいる。
「貿易の多くは、これまでと同じ条件(関税、制限条件の有る無しなど)で維持できているが?」と思う方もおられるだろうが、それはまだ違反が起きていないという「惰性」のなせる業でしかない。いったんルール違反が起きて現状を改悪されたら、直す手立てはもはや失われているのである。
この記事は5G通信に始まり、チップに広がった保護貿易がいよいよ国際貿易の1丁目1番地、自動車業界にも広がるという予言だ。21世紀はそういう時代になるだろう。
中露と西側のデカップルは、これでますます進行する。グローバル・サウスは中立を保とうとするが、クルマ市場については、西側がその多くを中国に奪われることになるだろう。
そう言えば、昨日半導体の専門家湯之上隆氏が「半導体のデカップルが進み、世界中で工場建設競争が起きたことで、ムーアの法則サイクルは止まるだろう」と述べるyoutubeも観た。それもそうなんだろう。
世界経済はそんなこんなで良くないことが重なって、一歩一歩破局に近付くが、拙著「米中対立の先に待つもの」で述べたように、それが21世紀の世界に起きる周期であって回避の手立てはない、「襲ってくる衝撃波にどのように備えるか?」の選択しかない、というのが私の見立てだ。
編集部より:この記事は現代中国研究家の津上俊哉氏のnote 2023年7月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は津上俊哉氏のnoteをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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