2023明治安田生命J1リーグ第21節の全9試合が、7月15日と16日に行われた。
同リーグ最下位の湘南ベルマーレは16日、本拠地レモンガススタジアム平塚でアビスパ福岡と対戦。最終スコア0-1で敗れている。
直近のリーグ戦15試合勝ちなしと、苦境から抜け出せずにいる湘南。ボール支配率で福岡を上回り(71%、データサイト『SofaScore』より)、何度か相手ゴールに迫ったものの、得点に至らず。後半41分に福岡のDFドウグラス・グローリにフリーキックから先制ゴールを奪われ、敗北を喫した。
湘南が福岡戦に向けて改善できたことと、今後の得点量産のために必要なひと工夫は何か。ここではこの2点について解説していく。
機能した湘南のサイド攻撃
[3-1-4-2]の基本布陣でこの試合に臨んだ湘南は、サイド攻撃で福岡のゴールに迫る。湘南は敵陣でボールを保持した際、片方のサイドに極力人を寄せ、味方同士の距離を狭めたうえで攻撃。逆サイドのウイングバックもタッチライン際ではなく、ペナルティエリアの横幅に収まる立ち位置をとっていた。
この攻撃配置がチャンスに結びついたのが、前半21分。ここではペナルティアークの後方に立っていたDF畑大雅(右ウイングバック)がDF杉岡大暉(左ウイングバック)からのパスを受け、相手GK村上昌謙へ強襲のミドルシュートを放っている。自陣後方で守備ブロックを敷く福岡に対し、これは有効な攻撃だった。
中央とサイドのレーンに選手を満遍なく配置し、ピッチを幅広く使って攻めるというのがサッカーの定石だが、この試合で湘南が徹底したのは「狭く攻める」意識。あらかじめボールサイドに人を寄せ、狭く攻めていれば、仮にボールを失っても複数人で連動して守備を行いやすい。この試合でも湘南はボールを奪われた直後に複数人による鋭いプレスを繰り出し、福岡のパスワークを窮屈にしていた。
敵陣での味方同士の距離を狭くし、淀みない攻守を披露する。これは湘南が勝ち点を稼いでいた昨2022シーズンの中盤戦以降に浸透していたコンセプトで、今節同クラブはこの基本に立ち返った。
山口監督が口にした手応え
湘南の山口智監督は福岡戦後の質疑応答で、自軍の選手の距離感について手応えを口にしている。
ー(前節の)柏レイソル戦では重心を後ろ目にして、前半を0-0で終えたいというプランでしたが、今日のゲームプランは?
「柏戦では2ボランチ([3-4-1-2]の布陣)で比重を後ろにして、まず守備の安定、特にマインドのところで距離感を近くして、という形でした。今日はそれプラス攻撃面で相手の(布陣との)かみ合わせのところでそのほうがいいと思ったので、布陣を([3-1-4-2]に)戻しました。守備に関しては、人数を揃えてどうにかなる部分とそれ以外の部分もあるので、使い分けをしながらやらなければいけないと改めて思いました。今日に関してはボールを持てる時間が多くて、持っているときの課題というのはあるので、考え方は引き続きやらなければいけないと思います。ただ奪われた後であったり、準備というのはひとつ意識として出せたと思うので、そこは前向きに捉えたいと思います」(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。一部省略・補正)
敵陣でのコンパクトな選手配置を、次節以降も継続できるか。この点が湘南の浮沈の鍵を握ることは間違いないだろう。