今年、ポーラ初の女性社長となった及川氏は、新卒で同社に入社して間もなく、販売会社に出向している。そこで経験したリーダーへの転機とは?

※本稿は『THE21』2020年9月号より一部抜粋・編集したものです。

「私たちをこれ以上がっかりさせないで」で気付いた本当の想い

出向先の埼玉の販売会社では、仕事漬けの毎日を過ごしていました。「自分がいないと、この部署はダメになる」という自負がありました。

ですから、課長への昇進試験を受けることになったときには、当然、受かるものだと思っていました。ところが、結果は不合格。「この程度で、なぜ試験を受けようと思ったのか」と、散々な評価でした。

今から思えばその通りなのですが、そこで私はわかりやすくグレてしまいました。クルマで営業に出るとき、「会議までに戻って来てね」と言われたら、「渋滞に聞いてください」と平気で答えたり……。組織人としてのマインドを失ったんです。

その態度が取引先にも伝わり、商品を販売していただいているショップオーナーの方に、呼び出されました。そこで言われた、「私たちをこれ以上がっかりさせないで」という言葉は、今でもはっきり覚えています。ここまで自分を見てくれている人たちがいることに気づかせてくれました。

そのことを上司に伝えると、上司は「いつ気づくかと待ってたんだ」と言って、「本当は何がしたいんだ」と尋ねました。私の口をついたのは、「組織を変えたい」。聞かれなければ言語化できなかったと思います。上司は、「だと思った」と、その仕事を任せてくれました。