Klothoを注射すると10回に5-6回覚えていなかったのが、それが4回程度に減るそうだ。血糖値の違いで、日々の記憶力の違いを実感しているので、それがどの程度意味があるのかよくわからないが?アルツハイマー病患者でも、Klothoの値が高い人は症状が軽いと報告されているそうだ。
ただし、klothoタンパクは脳血流関門を通らないので(血管を通過して、脳の細胞に届くことはない)、注射したklothoタンパクが直接脳神経細胞に作用しているのではなさそうだ。
Klothoには膜型(細胞膜に結合している分子)と分泌型(細胞膜に結合していない細胞外に分泌されるタイプ)の存在、分泌型でも複数のタイプがあることが報告されているので、分解されたものが脳内に入って作用している可能性や他の因子に作用して2次的に効いている可能性などが考えられている。
いずれにしても、この研究が再現して確認されれば、物忘れというやっかいな老化現象の改善に希望の光となる。1回の注射で2週間程度の症状改善につながるようなので、早く人での評価が進むことを期待したい。もちろん、私を含めた高齢者の記憶力改善につながって欲しいものだ。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年7月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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