長らく年功序列型の賃金体系をスタンダードとしてきた多くの日本企業において、上司と部下の「上下関係」はときにビジネス以外の場面でも見えない圧力を発することがあります。
かつては「上司よりもいい車に乗ってはいけない」といった価値観が蔓延する職場も見られましたが、賃金体系やライフスタイルが多様化するなかで、そうした考え方は「時代遅れ」になりつつあるのかもしれません。
とはいえ実際のところ、現在でも「立場が上の人よりもいい車に乗るのは気が引ける」と遠慮してしまう人もいるでしょう。今回は若い世代を対象に、「愛車について上司から投げかけられた一言」についてのエピソードを集めました。
イタ車を買ったら「監視の対象」に……
車選びは個人の自由とはいえ、日頃から通勤などで互いの車を目にしていれば、「あんな車に乗っているのか」など何かしらの印象を抱いてしまうものです。状況によっては、意図せず相手のコンプレックスを刺激してしまうことも。
「以前、20代の頃に働いていた職場での話です。通勤にはずっと軽を使っていて、そのときには誰かに何かを言われることはありませんでした。私自身、車にさほど興味があるわけでもなく、乗れれば何でもいいという感じで。
でも、あるとき街で見かけたアルファロメオのジュリエッタに一目惚れして、『コレが欲しい!』と思ってしまって。1年かけてお金を貯めて、ジュリエッタに乗り替えたんです。とてもお気に入りで、同僚からも『オシャレなの買ったね』などと好評でした。
ただ、ある上司から変に目をつけられてしまって、『イタリア車を買うなんて、故障で苦労するよ』とか、『女の人は雰囲気だけで選ぶからなぁ』とか嫌味を言われはじめました。
ゾッとしたのは、家の駐車場でリアバンパーを軽く擦ってしまった翌日、その上司から『技術に見合わない車を買うからそうなるんだよ』みたいなことを言われたことです。ぶつけたことは誰にも言っていなかったし、さほど目立つ傷ではないのに、どれだけチェックしてるんだよと……」(30代女性)
言葉の端々にコンプレックスを滲ませている人物と、同じ職場で働くのは気疲れするものでしょう。個人的に羨望や嫉妬の感情を抱くのは仕方のないことですが、それを表立った態度として露わにするのは避けてほしいですね。
入社してから気づく「理不尽な社内ルール」
車選びは個人の生活環境や趣味嗜好に左右されるものであり、基本的には会社から制限を受けるものではありません。とはいえやはり、自動車メーカーやその関連企業などにおいては、ある程度の縛りが設けられていることもあります。
「ある自動車メーカーと取引のある会社に勤めていて、敷地内の従業員駐車場に止められるのはそのメーカーの車種に限られています。数年前に転職してきたのですが、ここを選ぶ際にはその縛りだけがネックでした。以前から、祖父に譲ってもらったメルセデスを大事に乗ってきたんですよ。
ところが採用面接で聞いてみると、『少し離れた駐車場であればとくに制限なく止められる』とのことで、安心して入社を決めたんです。実際に通勤しはじめてからも、特段不便は感じていませんでした。
でも、数ヶ月後の飲み会で、上司から『あなたは転職だから仕方がないけど、次に車を買うときには、できるだけこのメーカーの車種にしてほしい』とやんわり言われて。お酒が進んでからは『やっぱりそういう義理を通せる人間が上に行く』みたいなことも言っていて……会社として、形式的には許容しているけど、よく思わない人もいるんだなぁと感じましたね」(20代男性)
車選びに限らず、それぞれの企業には『表立ったルールにはなっていないけれど、暗黙の了解とされている常識や風習』が残っていることがあります。こうした部分は事前に見きわめることが難しく、働きはじめてから「思わぬ常識」に面食らうこともあるでしょう。
働くうえでの常識は、個々の従業員によっても異なることがあり、「上司の小言をどれだけ真に受けるか」という判断に迷うこともしばしばです。明らかに理不尽な言いがかりに対しては、体よくスルーする技術を身につけることも重要なのかもしれません。