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多くの研究者に、毎日のように粗悪な学術誌・学術集会の案内メールが届く。
学術誌を世界中の図書館が購入する時代があった。今では学術誌はネット上に収蔵され、閲覧すると費用が掛かる。こうして図書館や閲覧者、つまり利用者側が出版費用の一部を負担する。
論文を書いた研究者は、紙の時代には「別刷り代」を出した。自分の論文だけ抜き出して印刷し表紙を付けた小冊子を別刷りと呼ぶ。関係者に配布すれば学術的な評価を受けたとアピールできた。別刷りがなくなった今、投稿料の支払いを求められる場合がある。こうして論文の提供側も出版費用の一部を負担する。
紙の学術誌なら、印刷し製本し、世界中に配送する費用が掛かった。しかし今ではサーバー代だけである。利用者と提供者からの収益に比べれば安く済むので、学術誌の発行は儲けが期待できる事業になった。
手っ取り早く論文数を増やして業績評価されたい研究者は、簡単な審査で採用されると謳う学術誌にひっかかる。「著名なあなたは投稿料不要」といった甘い罠も繰り出される。発行者はカモを集めて利益を得る。こうして粗悪な学術誌が横行する。
InterAcademy Partnership(IAP)が粗悪な学術誌・学術集会の横行を警告する報告書を公表した。わが国では、文部科学省 科学技術・学術政策研究所が翻訳「粗悪な学術誌・学術集会を拡げないために」を公開している。