しかしイスラム移民は国家に対する帰属意識がなく、アラーの神に従って行動するので、政府がコントロールできない。無原則に移民を増やすと、都市の一部に固まってスラム化する。移民を排斥する極右政党が成長し、社会に深刻な亀裂が生まれるというのがヨーロッパの経験である。

日本に住んでいる外国人労働者は約182万人で、労働人口の約2%。これはEU諸国の外国人労働者が12~15%にのぼるのとは大きな違いで、増加率も頭打ちだ。5年の期限つきで家族も呼べないという条件では、来てくれる労働者がいないのだ。

厚生労働省の資料

移民による分断は後戻りできない

政府が移民を増やす理由は人手不足だが、3Kだろうと激務だろうと、賃金を上げれば人は雇える。財界が移民を求めるのは、低賃金労働を輸入して、劣悪な労働条件と非効率的な企業を守るためだ。それがヨーロッパのたどった道である。

業種別にみると、建設・医療・介護は人手不足が深刻だが、一般事務は慢性的に過剰雇用で、企業別にみると、人手不足は地方の中小企業に集中しているが、規制や補助金で守られているため、淘汰されない。人手不足の原因は、こういう労働市場のゆがみである。

このゆがみは、コロナで拡大した。雇用調整助成金の申請は400万件を超え、支給額の累計は4兆円を超えて雇用保険会計は破綻に瀕している。これで失業は防げるが、社内失業は500万人ともいわれる。

それを改革しないで低賃金の外国人労働者を増やすと、社会の分断が深刻化し、クルド人のようにスラム化して暴徒になる。ヨーロッパはもう後戻りできないが、日本はこれからよく考える必要がある。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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