このインタビューは恐らく日銀側がしかけたと考えられます。日経はいいタイミングがと考え、飛びついたのでしょう。夏場にかけて何の変化もなければ、「日銀は優柔不断で臆病」とされ、「植田総裁は当初、期待されたのにやはり学者としての限界がある」との評価が強まっていくでしょう。
日銀ウォチャーの加藤出氏(東短リサーチ)が直近のレポートで、「植田日銀の事実上の円安誘導に国民が苦しめられている」と、厳しく指摘しています。デンマーク、韓国、スイスなどはインフレ率が日本より低いのに、政策金利は日本よりずっと高いというのです。
デンマーク=物価2.9%、政策金利3.1%、韓国=物価3.5%、政策金利2.7%、スイス=物価1.75%、政策金利1.7%で、日本は物価3.2%、政策金利マイナス0.1%というわけです。インフレ率が日本に近いカナダは物価3.4%、政策金利4.75%です。
日米の金利差は5%程度とされ、円安の最大の原因です。物価目標は数多くある経済指標の一つにすぎないのに、これ1本にしがみつき、全体像をみようといない。日本の特異性がよく分かります。
金利を主要国でもっとも低くしてきたのに、実質経済成長率は最低ランクに沈んでいます。金融緩和に加え、財政膨張という2本の竹馬に乗って歩いているうちに、自立歩行ができなくなったのだと思います。アベノミクス以来の金融財政政策の錯誤に気づくべきです。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年7月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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