日経のインタビューに登場した背景
日経新聞の一面に7日、内田・日銀副総裁が応じた不思議なインタビュー記事が載りました。10年以上にわたる長期の異次元金融緩和の修正(出口)を示唆したと受け取るしかない発言内容です。

内田眞一日銀副総裁 NHKより
日銀総裁のインタビューならともかく、単独インタビューとはいえ、副総裁の発言が一面で目立つように扱われ、さらに中面で紙面の半分以上を使って日経は解説を載せました。新聞編集の常識から推測すると、このような破格の扱いは明らかに意図がある時です。
しかも解説記事の第一行目は「日銀は10年間続けてきた異次元緩和の出口が近づきつつある」との書き出しでした。これは何かが裏にある。総裁ならともかく、副総裁のインタビューの解説で、ここまで踏み込むのは、日経側には、日銀の意図を知って確信するものがあったということです。
植田総裁の発言だと既成事実化されるので、副総裁を使って市場にシグナルを送ろうとしたのでしょう。日銀が6月16日の金融政策決定会合で大規模金融緩和を決め、植田総裁が「金融引き締め(利上げ)が遅れるリスクより、早すぎるリスクのほうが小さい」と記者会見で語った時から、まだ3週間ほどです。その後、日銀が物価、景気予想を修正せざるを得なくなった。
金融緩和の修正が秋以降にずれ込むのではなく、近くあるのだろうと受け取るべき記事内容です。最近の円安、勢いを増す物価高、それに苦しむ国民の暮らし、世論調査でみる内閣支持率の急落(マイナンバーカードを巡る行政の混乱と物価高が背景)に直面して、日銀は動かないわけにはいかなくなったと考えます。
消費者物価は実質4%以上に上り、日銀が想定する「徐々に上昇率が鈍化し、23年には2%台に戻る」というシナリオが狂い始め、物価高騰が長期化する流れです。賃金上昇が物価上昇に追い付かず、5月の実質賃金は1.2%減です。日銀が物価政策に気を取られているうちに、景気が沈滞局面に入ってしまう可能性がある。