なぜ、官僚は頻繁に人事異動があるのか

民間企業の中には、広報、営業、法務、人事などと部署ごとにある程度専門分野が決まっていて、それに応じた配置を行っているところも一定程度あります。また、一度配属されたら、長い間同じ部署で働くことになるケースも多いのではないでしょうか。

中央省庁の場合は、それまでの担当と全く分野の異なる畑違いの部署に配属になることがよくあります。子育て政策の部署で政策立案を担当していた職員が、異動で人事や広報を担当することもありますし、社会保障を担当する厚生労働省ではたらいていたのに、外交を担当する外務省や住宅政策を担当する国土交通省で働くこともあります。

また長く一つの部署で働く人もいる民間企業とちがい、長くても3年で異動することが通常です。短くて1年、長くて3年。同じポストにいるのは、概ね2年程度です。2年間で課の職員がすべて入れ替わるとすると、一回の異動では、職員の半分が異動する計算になります。

幹部になるまでに、なるべく多くの経験をさせようという配慮もあるのでしょう。近年では、スペシャリストを養成しようとか、本人の希望を重視して人事配置をしようという試みも徐々に増えてきていますが、一般的には頻繁に人事異動があると言ってよいと思います。

政策提案に関わるあなたにとっては、比較的短期間で異動があるという中央省庁の人事の特徴が特に影響がありそうです。もしあなたが現職の担当者と進めるべき政策のビジョンを共有していたとしても、次の担当者が同じようにあなたに共感してくれるとは限りません。異動があったとしても政策を停滞させないためには、中央省庁の人事を理解しておくことが重要なのです。

また、人事異動したばかりの時期は、新任者よりもむしろあなたの方が政策に詳しいことも多いはずです。異動の時期に有意義なコミュニケーションを担当者と取ることで、より良い政策づくりのきっかけを作ることができます。人事異動時の対応如何で担当者にとってもあなたにとってもいい結果を導くことが可能になるのです。

(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)

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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2023年7月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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