BBQでもスモアでもない食事スタイル「Forking」を提案
上山さんがネーミングしたForkingとは、焚き火と食を組み合わせた食事スタイルのことだ。
キャンプシーンで、マシュマロやソーセージを串に刺して焚き火で焼くこと自体は珍しくない。BBQフォークも簡単に購入できる。
「ただ、食材がその2つに限定されがちなことにモヤモヤとした疑問がありました。そんな中、前職のグループ会社が運営するBBQ場で焚火の炎で炙るBBQプランを体験しました。竹串でいろいろな食材を直接焚き火に炙って食べるという、シンプルながらとても楽しい体験でした。
この体験にわかりやすいネーミングをつけて、必要な道具立てや炙っておいしい食材一覧などを編集・デザインすることで、一つの体験として普及するのではないかと考えたことが企画の背景です」(上山さん)
スノーピーク時代から、アウトドア体験として焚き火の需要が増していることは実感していたと、上山さんは言う。
「自動車のEV化が進めば、車を横付けして楽しむオートキャンプの電化もさらに進んでいくでしょう。そうなるとアウトドアの調理用熱源も、ガスコンロからIHヒーターなどより安全なものが主流になっていくと思います。その反動として原始的な熱源である焚き火の体験需要はさらに増すと考えています。
串でいろいろな食材を炙って食べるという体験は、シンプルゆえに炙り方を工夫したりとても楽しいものです。
それからBBQって、“調理する側”と“食べる側”に2分されがちですよね。刺して炙るだけのForkingなら、みんなが同じ空間で食を楽しむことができます」(上山さん)
「焼き芋のように大人と子どもが同時に楽しめる食体験を」
イラストは、アウトドア関連のイラストを得意とするイラストレーター・MIKI Takahashiさんが担当。上山さんは彼女が住む知多半島まで赴き、Forkingの楽しさを“現地で実際にForkingしながら”伝えたという。楽しさが伝わるユーモアのあるイラストに仕上がった。
今秋よりForking専用ツールや調味料などを公式サイトで販売予定で、自身のキャリアを生かした空間や業態のデザインプロデュースなどの展開も視野に入れている。
今は癒し空間としての需要が高い焚き火だが、上山さんが描いているForkingは、あくまでも焚き火と食を融合させた「楽しい」場だ。
「僕自身は、父親と一緒に落ち葉を集めて道端で焼き芋を焼いた記憶があるのですが、今はなかなかできませんよね。キャンプなどのアウトドアレジャーが、そういう体験をする場としての役割を担っているんだと思います」(上山さん)
とてもシンプルで原始的だからこそ、ワクワクする食事スタイル。上山さんが提案するForkingが、これからのアウトドア業界に新風を吹き込むことを期待したい。
(IGNITE編集部)