たとえば山頂で食べるカップラーメン、河原で食べる鮎の塩焼き、メスティンで炊いたご飯。大自然の中での食事はなぜあんなにおいしいのだろう。それは、外で食べるという行為が、原始的な食スタイルに近いからではないだろうか。

本記事では、元スノーピーク執行役員・上山桂さんがプロデュースする、アウトドアの食事スタイル「ForkingⓇ」を紹介する。

上山さんが言うところの“アウトサイド快楽”の世界がのぞける、ユニークなこの企画。忙しくて空を見る時間もないという人にこそ読んでもらいたい。

“ソト”での楽しいこと・心地良いことをとことん追求

上山桂さんは、ハイエンドなアウトドア製品を展開するスノーピークに新卒でプロダクトデザイナーとして入社。キャリアを通じてものづくりやキャンプ場開発などを経験し、2022年7月に個人事業主として「OUTSIDER」を独立開業した。

上山桂さん

上山桂さん

「OUTSIDER」は自然との関係が希薄になっている現代社会において、野外空間とデザインとを掛け合わせ、ヒトがソトで快く楽しく過ごす、そんな「アウトサイド快楽」を追求している。デザインの対象は、たとえば野外の場づくり、あるいはその場にあることで楽しいコミュニケーションが生まれるツールなどだ。

「たとえば僕は、昔から縁側が好きだったんです」と上山さんは言う。縁側は室内と屋外の“つながり”を感じられる場だからだ。

「縁側って、家にいながらそよ風を感じられるでしょう。ボロアパートの2階に下宿していた頃も、あえて全部窓を外して、そういう空間をつくっていました。外から丸見えですけど(笑)」(上山さん)

“ソトでヒトが感じる「快い」や「楽しい」”、それがすなわちアウトサイド快楽。AIに相談したり、メタバース空間で買い物したりできる時代になったが、心地良いと感じる身体的体験ができる場が減ってきていると上山さんは考える。

アウトドアメーカー勤務を経て40代で独立開業

新卒1年目から製品の企画から量産まで一貫して担当し、スノーピークの開発マンとして叩き上げられた上山さん。スノーピークの本社があるのは、金属加工の集積地として知られる新潟県の燕三条エリアで、ものづくりに厳しい職人たちと数限りなくやりとりしてきた。

経営企画に異動になり株式上場業務に従事をする一方で、地方のキャンプ場の再生コンサルティングにも携わった。大分県日田市の「スノーピーク奥日田」ほか複数のキャンプ場の立ち上げに携わり、その後、経営企画室長、子会社の社長と要職を歴任した。

「自分が40才になるのを機に独立を意識し始めました。スノーピークを退職したのち、キャンプ場開発・運営の会社を経て、今は個人事業主としてクライアントワークをするかたわらで、自主企画を企てています。

その一つとしてForkingを企画し、その手引きとなるWebサイト『forking.life』を公開、まずは楽しみ方を情報として提供している段階です。道具立てとしての商品は今秋に発売したいと考えています」(上山さん)