北欧のスウェーデンでイスラム教の聖典「コーラン」(クルアーン)を燃やすという事件が起きた。

イスラム教の聖典「コーラン」(バチカンニュース2023年7月4日、写真はANSA通信)
スラム教の聖典「コーラン」(バチカンニュース2023年7月4日、写真はANSA通信)
事件はスウェーデンの首都ストックホルム、イスラム教の犠牲祭初日に当たる6月28日、同国在住のイラク人が市内のメインモスク(イスラム教寺院)の前でコーランの数ページを焼いた。外電によると、モスク外で行われた抗議活動は2人だけの小規模なもので、男がコーランに火をつけて燃やすと、周囲にいた人の中にはそれを喝采する者がいた一方、コーランを燃やした男に石を投げる人もいたという。ちなみに、治安部隊は問題のデモを事前に承認していた。スウェーデン憲法では言論の自由が優先されるからだ。
この事件はイスラム世界で怒りを誘発している。事件を重視した「イスラム協力機構(OIC)」(56カ国・1機構)は2日、サウジアラビア西部ジッダで臨時会合を開き、対応を協議した。また、欧州連合(EU)カトリック司教協議会委員会(COMECE)は4日、スウェーデンにおけるコーランの焚書を非難した。
フランシスコ教皇はアラブ首長国連邦の日刊紙とのインタビューで、「こうした行為に憤り、嫌悪感を抱く」と語った。「神聖とみなされた本は、信者への敬意から尊重されなければならない。表現の自由は、他者を軽蔑する言い訳として決して利用されてはならない」と述べている(バチカンニュース独語版)。
スウェーデンでのコーラン焚書事件の背後には、同国の北大西洋条約機構(NATO)加盟問題があるものと推測される、同国はロシアのウクライナ侵攻を受け、NATO加盟を目指し、加盟申請したが、同国がクルド労働者党(PKK)のイスラム過激派の亡命を認め、支援しているとしてNATO加盟国トルコが強く反発し、スウェーデンのNATO加盟をブロックしてきた。
トルコ政府の加盟妨害に不満を持つスウェーデン国民や同国に居住するPKK支持者たちの間でトルコ批判が高まっている。一方、コーランの焚書を受け、トルコは一層、スウェーデンの加盟を阻止することが予想される。実際、トルコのエルドアン大統領は、「イスラム教徒への侮辱は表現の自由ではない」とコーランの焚書事件を強く批判し、スウェーデン政府をけん制している。