例えば、彼が書いたこの記事。「当時の米国指導者は、戦争に勝つために原爆が必要ではないと知っていた。だがそれでも投下した」このような見出しが躍る。
だがこれは米側の投下理由だ。一方の日本が「降伏した理由」は、必ずしも合致しない。かたや主語が米国、かたや主語が当時の軍国日本。
いまだに世界の通説は、8月6日ヒロシマが引き金、9日ソ連参戦がダメ押し、決定的な要因になったということだ。
当時、日本国民・国土より天皇が重要とした民主主義無視の当時の戦争指導者は、ありとあらゆる手を使って天皇・国体・皇室が守れる「条件付き」降伏を望んでいた。
ここも情報戦の敗北だ。ソ連は戦後の覇権と、北海道など日本の領土、さらに抑留で分かるような無料の労働力が欲しいだけだった。米国だけでなく、世界と連合国の殆どが無条件降伏など容認できないのが現実だった(ポツダム宣言草案から削除)。無知な日本はソ連に利用されただけ。それ以前にソ連が条件付き(天皇存続)仲介交渉に依存できない情報があったのに、無知な日本は全て無視、それ以前もやったように信じたくない情報は無視、最後の最後に、8月9日その頼りのソ連に裏切り侵攻されるまで、現実を受け入れられなかった。
「和平を望む日本、負けが決まっていた日本に差別感情もあり原爆投下した」とか一部日本人はいう。
違う。「和平を望む」という意味は、米国だけでなく世界が受け入れられない天皇護持を条件にすることで、無知な日本の自分勝手な夢また夢、実現不可能。世界の殆どが天皇が侵略戦争の元凶の1つだと思っていたので、そもそも受け入れられるはずがない。日本人以外の世界にとって天皇制は全く重要でないどころか、軍国主義に利用された悪のイメージがある。
それを逆手にとったのが戦後の占領政策。筆者が長時間対談したコロンビア大学のヒュー・ボートン教授が言った。天皇を利用して統治に役立てる。これがGHQマッカサー元帥の基本的な姿勢になった。
そして最後の最後まで一撃を加えて日本に有利な和平を交渉で勝ち取るとか、信じられない判断ミス。敗戦が決まっていたのは間違いないが、ヒロシマ・ソ連参戦無しに、8月14日以前の降伏はなかった。
天皇の死刑や皇室廃止が決まっていたわけではない。だが最初からそうだが、国民のことなど考えない当時の指導者はそれで頭が一杯だった。
米軍に最後の一撃を与えて日本に有利な条件で講和をするという夢を最後まで捨てなかった。だが本土決戦とか言っても、日本本土には大した兵力がない。中国などに展開する2-300万の陸軍を運ぶ海軍力もない。だからそもそも本土決戦などできなかったというような論もある。
その一方で、陸軍省軍務局で本土決戦計画担当者、岩田正孝中佐の証言がある。「当時300万くらいの兵力が日本本土にあった。一回の戦闘で全部使って全滅してもよい。一度勝てばよい。それまでの戦闘は海軍・航空力の援助が必要だが、本土決戦は陸軍だけでできる。一度の勝利でよい。それを契機に戦争を有利に運べる。あとは外交次第」と証言した。
被ばくした筆者の父がヒロシマで感じていた内容と合致する。どう考えても一撃など与えられないことを知らず、現実を認めないで、本気で玉砕する気だった。天皇のために死ね、そんな雰囲気だった。
同時に、岩田中佐、宮城事件を起こしながら自決もせず生き残った人のようだ。そういう人物が自己正当化のために言ったことなど極めて信憑性が低いという論もある。
ポイントは、この戦争における日本の思考は、冷静な現状分析ができていない。だが楽観的に考えて行動を起こしてきた。
その結果の1つが降伏しないで、原爆を使われると結果を招いたともいえる。それを米国に謝罪を求める。あまりにも一方的な主張で、強い違和感がある。
これとは別に貴重な映像がある。天皇自身が自分の口で「戦争をどうするか決めるのは内閣。しかし最後の御膳会議で、意見が割れたので、自分はこれ以上国民を苦しめるのを望まなかったので、終戦を望んだ」というようなことを言った。
日本のメデイアではなく、米NBCのキャスターのインタビューだ。筆者が無知なだけかも知れない。だが、日本人がこんな重要なことを直接聞いた記録があるのだろうか。もし本当にないのなら、なぜしっかり生きているうちに天皇に聞かなかったのか?問い詰めなかったのか?これも各種問題の元凶の1つといえる。
問題は御前会議など、日本側の議論と、そこで明らかになったはずの指導者の認識。筆者が無知なだけかも知れない。降伏理由を理解するのに、一番重要な8月6日から10日までの(御前)会議記録がないようだ。天皇に関わることなので、隠蔽か? 非常に不自然です。
米国は民主主義、まずは国民の知る権利を優先にする。自信あるから記録を残すのだろうという人がいる。違う。ウソもあるし、やっていることに100%自信がない。だから公文書を沢山残す。世界による検証を、いまでも待っているし、世界中がやっている。
他方の日本。公文書など基本的に作らず、国民に隠す。1945年8月になにが議論されたか、詳細が分からないことが多い。そして感情論と思い込みで、今回のようにヒロシマは降伏と関係ないとか言い出す。
一応分かっていることは、8月14日くらいに意見が2分した御前会議で、天皇が最終的に降伏をご聖断したとされる。
ヒロシマ後の日本軍調査団派遣。その被害はかなりのショックだったはず。その調査報告書は公開されているのか?単なる新型爆弾だけ?放射能問題は当然知らなかったが、物凄い威力で、戦争継続は無理と判断はなかったのか?
日本を降伏させたという理屈で原爆を正当化する米国の教育がデタラメとか言ってあざ笑うだけでなく、当事者同士の日米の二項対立にしない努力が重要。米国以外の「欧州」など世界がどう解釈しているか、それを知るため小生のように議論するべきです。
7月末ポツダム宣言を、無知で傲慢な日本は黙殺した。ここで受諾していれば、原爆2つがなかった。さらにソ連に参戦言い訳を与えずに、有利な立場を与えることもなかった。最悪、北海道も占領された可能性があった。そうなら最悪の判断だ。
筆者はここ3ケ月くらいウクラ取材で、アフリカ・中東も含めて欧州を中心にいろいろな国の人20人以上と話した。その1人がウクライナ人核専門家。ハーヴァード大上級研究員。ロシア・ウクライナなどの核兵器を研究するマリアナ・ブジェリン (Mariana Budjeryn) だ。
2022年9月のプーチンの演説。
これは孫とひ孫のための戦場だ。奴隷状態で魂を破壊する実験から彼らを守るためだ。思い出して欲しい。米国は世界で唯一2回も核兵器を使用、広島と長崎を壊滅させた国だ。そのような先例を作った。
これに対してウクライナ出身でハーバード大の上級研究員、ロシア・ウクライナなどの核兵器を研究するマリアナがこう述べた。
プーチンは広島・長崎の件を持ち出した。とても気になる。前回の戦争で、核が使われたケースは、核を持たない日本に対するものだった。それは戦争の”早期終結”と”無条件降伏”を引き出すものだった。
この生コメントが入ったNHK番組は、数日前ギャラクシー賞に輝いた。
現実は、「ヒロシマ」と「ソ連参戦」、この2つの要因の割合。歴史分析には質を問うqualitative もあるが、数量的な基準、1〜10のスケールならば、筆者は前者が2、後者が8くらいと思っている。
これまで話した100人を超える米国以外の知識人の殆どが、前者が7か8、後者が2〜3という感じだ。
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以下はAIの解説です。
米国だけでなく、英語情報を中心に世界中の情報を加味している。被害者にはさらに申し訳ないと思いますが、ナガサキは降伏には殆ど意味がなかった。マンハッタン計画など当事者数人からも、筆者は直接聞いた。ナガサキなくとも14日受諾は変わらなかっただろうと。
いずれにしても、以下は参考までに(ヒロシマ被ばく二世の小生にとって原爆はライフワークです)。
AIの解説。
広島への原爆投下は、日本の降伏において重要な役割を果たしましたが、その影響は複雑であり、他の要素も含まれます。以下に、広島への原爆投下の役割をいくつか挙げます。
降伏への圧力:広島への原爆投下は、日本に対して強力なメッセージを送りました。原爆は破壊力が非常に高く、民間人を含む多くの犠牲者を出しました。この攻撃は、アメリカが極めて強力な兵器を保有していることを示し、日本に対する圧力を高めました。これにより、日本の指導者たちは降伏を検討するようになりました。
戦争の早期終結:広島への原爆投下は、戦争の早期終結を促す役割を果たしました。日本には既に多くの都市が空襲で破壊され、軍事的な打撃も受けていましたが、広島の原爆投下は破壊の度合いが前例のないものでした。この投下によって、日本の指導者たちは戦争の継続が不可能であることを認識し、降伏の決断を下す一因となりました。
原爆の恐怖:広島への原爆投下は、原爆の恐怖を世界に広める役割も果たしました。この出来事は世界中の人々に強烈な印象を与え、原爆の破壊力と人道的な被害を実感させました。原爆投下の報道や被爆者の証言は、戦後の核兵器開発と拡散に対する国際的な関心を高め、核軍縮の重要性を訴える要因となりました。
ただし、広島への原爆投下だけが日本の降伏に影響を与えたわけではありません。広島の投下のわずか数日後には、長崎への原爆投下も行われました。また、日本への連合国の軍事的圧力やソ連の対日宣戦、経済的・物資的な困窮状況なども、降伏の要因となりました。広島への原爆投下は、これらの要素の一部として、日本の降伏への道を開いたとされています。
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そして先ほどのニュース。
盗人猛々しいとはこのこと。当時もいまも、ロシア人のやり方は許せない。
だが1つだけ言えること。上述したように、「ソ連の参戦」が「ヒロシマ」に次ぐ、日本の降伏要因のダメ押しになったのは間違いない。
米国などは、日本をよく知るグルー大使らが、皇室を保証すれば日本は降伏すると主張。ポツダム宣言草案には皇室護持条項もあった。当時の当事者などの意見を聞けば分かる。だが天皇は軍国日本の元凶の1つ。やはり何の保証もしないという声が強かった。実際にそうなったが、無条件降伏しか選択肢はなかった。
情報戦に負け続けの日本。天皇を守ろうとして、よりによって一番天皇の保証などしないソ連に頼ろうとした。そして原爆を使われた。今回のようにソ連による言い訳にも使われた。シベリア抑留、北方領土問題も直接、間接的にも正当化される。最悪の判断だった。
感情的にならずに、しっかりと史実と論理力で現実を直視する時が来ている。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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