ネットで熱心に調べる人ほど情弱になる

何でもかんでもネットで熱心に調べる人がいる。これ自体は悪いことではない。正しく使えばネットは非常に優れたツールである。しかし、それは「正しく使えている」という前提あっての話だ。

同白書では「ファクトチェックの認知度」という項目があり、日本は圧倒的に認知度が低いことを明らかにした。同じアジア圏の韓国と比べても4分の1程度しかない。これは大変低い数値であり、いかに多くの日本人がネットの情報をまったく疑いもせず鵜呑みにして騙されてしまうかを明らかにしただろう。

「この情報は本当に正しいのか?」と疑うことは多くの人にとって面倒な作業である。だから情報の裏取りをしないで、影響力のある人の発言なら疑わずにアッサリ鵜呑みにする。さらにITリテラシーがない人は、情報の真偽を確かめる方法が分からない。

昨今、広域強盗闇バイトが世間を騒がせているが、これも数秒間を使って真偽を確かめる手間をかければ、たちどころに手を出すべきではない案件だと分かるのにしない。また、フェイクニュースや怪しい陰謀論を鵜呑みにしてトンデモ科学を積極的に布教してしまう人もいる。これらすべてはファクトチェックに対する無理解から来ている。

ネットで熱心に調べる人は、自分が信じたい情報ばかりを偏重的に収集する能力に優れている。結果、自分の思考や行動が正しいと強固に思い込み、それを裏付ける情報ばかりを熱心に集めるので知らないうちに客観性はドンドン失い、独りよがりになり続けるのだ。

医者から告げられた診断に対して「ネットでは違うといっていました!」と反論する患者がいるという話をよく聞く。これも情報を誤って偏重的に収集した結果である。冷静に考えれば、実際に患者の体を診断して結論を出した医者の判断の方が、どこの誰かも分からない人の意見よりよほど正しい可能性が高いだろう。

仮に医者の診断のファクトチェックをするというなら、「医者の判断とネットの意見の比較」ではなく、別の医者とのセカンドオピニオンとの比較をすべきではないだろうか。過度にネットの情報を信用しまう人は、情報の比較妥当性をも判断する力が失われてしまうのだ。

ネットは使い方次第で強力な武器にも、諸刃の剣にもなる。問題は自分では強力な武器だと思いこんでいても、実はその逆でドンドン自分の思考を偏らせて情弱にしていく諸刃の剣だった場合である。難しいことにそのことに自分で気づことは、容易ではない。

 

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