これはその通り! 大いに賛同します。昨今の脱炭素喧騒によって川下大企業が失くしてしまったコンプライアンス意識、企業としての倫理感の低下は極めて深刻だと感じています。仮に相手が下請取引の対象でないサプライヤーであっても、広義の下請法の精神や、大企業であれば必ず開示している行動指針、調達基準などに記載されている「優越的地位の濫用」に抵触します。
もし、サプライヤーは、納入先企業から理不尽な要求をされたら、堂々と行政に訴えればいいだろう。そうすれば、サプライチェーン・調達部門も本気で排出量算定を学ぶだろうし、サプライヤーへどんな依頼をするべきか真剣に考え出すに違いない。
冒頭の「なんでもいいから出してよ」なんて言う担当者に筆者は出会ったことはなく、現状でもガイドラインやCFPについてよく勉強されていると認識しています。
厄介なのは、融通が効かないケースが多いことです。ガイドラインや彼らの先の顧客企業からの要請に従って、サプライヤーに対してガチガチの要求が行われます。たとえば、CFPを算出するために必要なエネルギー使用量は必ず電力量計から得られた計測データにすること、排出原単位は産業連関表由来の平均値を使うこと、といった具合です。
理想としては分かるのですが、現実では教科書通りに算出できる企業はごく僅かです。電力の見える化が完璧にできているサプライヤーなどまだ一部ですし、排出原単位というのはある範囲・ある時点で一般化された推計値でしかないのです(産業連関表など10年前、15年前のデータは当たり前で、マクロ分析ならともかく企業個社で使うのは無理がある)。
従って、筆者は簡易的な手法として「①サプライヤーの年間CO2排出量×②貴社の年間調達額÷③サプライヤーの年間売上高」で求めれば、自社のデータと公開情報から拾えるのでサプライヤーの回答を待ったりフォローする必要がなくなって算出も早いですよ、と伝えています。
サプライヤーへの要請がなくなれば当然ながら下請けいじめも存在しようがないのですが、これを聞き入れてくれる依頼主は1割未満といった印象です。
ところが先月、初めて筆者から提案するのではなく最初から上記に近い手法「①サプライヤーの年間CO2排出量×②自社への年間販売額÷③サプライヤーの年間売上高」で①②③を求めてきた企業が現れました。①③は公開情報から拾って②を自社の調達金額にすればサプライヤーに聞く必要はないのですが、それでもこれは一筋の光明です。
4/24付拙稿を読んでくださったのかは分かりませんが、こうした企業が増えてくれると不毛なやり取りが減り産業界全体で生産性のロスがなくなります。
そのためにも、冒頭のダイヤモンド・オンライン記事のように産業界の現場で起きていることをメディアが取り上げたり、オープンに議論できる機会が増えることを大いに歓迎します。企業人の皆さんからの発信も増えてほしいです。
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『「脱炭素」が世界を救うの大嘘』
『メガソーラーが日本を救うの大嘘』
『SDGsの不都合な真実』
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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