人口減少そのものは大した問題ではない。日本は「経済大国」ではなくなるが、世界最高レベルの人口密度は低くなり、一人当たりGDPが上がれば生活の質は上がる。この点では日本の実績は悲観すべきものではなく、一人当たり成長率は先進国の平均程度である。
しかし台湾有事で難民が発生したら、旧宗主国の日本は大量の難民を受け入れなければならない。台湾と人口がほぼ同じウクライナの難民は270万人。日本は国連に数十万人の台湾難民を割り当てられるだろう。不法滞在に、甘い顔をしている場合ではないのだ。
移民が社会保障にただ乗りする問題は社会保障のゆがみが拡大し、国民負担が大きくなることだ。今後の平均成長率を1%としても可処分所得が絶対的に減少し、国民負担率(税・社会保険料)は国民所得の60%を超える。若い移民が増えると年金保険料は増えるが、短期滞在では加入しない。
他方、国民健康保険は短期滞在でも加入できるので、問題のガーナ人のような不法移民の国民健保へのただ乗りが増えている。さらに生活保護を受ければ医療はすべて無料だから、観光ビザで入国して残留しやすい日本は不法移民にとって魅力的な国である。
ミルトン・フリードマンは、自由な移民は福祉国家と両立しないと指摘した。彼は移民には賛成だったが、すべての移民の生活を国家が保障することはできないと論じた。国家の中で人生が完結することを前提にする社会保障という制度は、国境を超える移民には適していないのだ。
アメリカでもヨーロッパでも、人々はこのパラドックスに気づき始めているが、日本では幸か不幸か、それほど多くの移民を入れることはできないだろう。日本はもう外国人労働者にとって、それほど魅力的な国ではないからだ。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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