黒坂岳央です。
「出口戦略」という言葉がある。簡単にいえば、投資や経営において辞める時に損失を最小限に抑えるための戦略のことで、多くは「利益を最大化し、損失を最小化して撤退する」という意味合いで使われる。
出口戦略とは経営や投資、軍事においてよく使われる考え方だが、日常生活を送っていると、それ以外での文脈でも出口戦略の重要性を痛感させられる場面は少なくない。
過去記事脳の老化を知らせる「ある行動」に書いたことがあるが、
「他の人がやっているから」
「昔から続けてきたから」
と目先の思考をサボって前例に倣うやり方を採用することを前例踏襲思考という。正直、この前例踏襲の出番が増えてきたら、人生の生き方としては黄色信号である。なぜなら人生におけるあらゆる選択肢で「変化しない」を選び続ける生き方であり、誰しも認めたくはない老化現象そのものだからだ。
日常を生きているとあらゆる場面でこの前例踏襲を目の当たりにする。実例を話そう。
保護者参加型の学校や園の手伝いを求められる際、「これはもう誰にもニーズはないのでは?」と思えるような依頼が来て驚かされることがある。保護者集会でリーダーの人からそれを言われた時に、「今は昔と状況は変化しているのだし、これはやめてしまって、別のこの活動にリソースを割く方が合理的だと思うがどうだろうか」と伝えたところ「言われていることはよくわかります。うーん、でも前の代から40年も続けてきましたし、いきなりやめると驚く人もいると思うので今回もこれで」と決定されてしまった。
誰からのニーズもない、儀式的なことに多くの関係者が巻き込まれ、ムダに労働力が使われてしまう。これは前例踏襲思考から来ているのだ。決定者としても冒険をしたくない。前例踏襲なら責任を取らずに済むし、考えることをしなくて済むので楽だ。つまり、前例踏襲主義的な決定とは、彼らにとっての経済合理性に裏打ちされた行動と言える。
郷に入っては郷に従えという言葉があるので、自分は決まった以上は何も言わず積極的に動くつもりだが、変化に緩慢な体質は、前例踏襲思考から生まれていることを理解できた体験だった。
これがあらゆる組織や社会をドンドン老化させてしまう原因だ。もしかしたら古い体質の組織における一部の意思決定はもう人間にやらせるより、AIに決めさせる方が良いかも知れない。