後の2つの判決は紙幅の関係で短く。
学生ローン救済では、年収125千ドル未満の借り手は10千ドルまで免除され、4000万人以上の債務者のうち約2600万人が救済を申請したか、または既に教育省に適格と判断されていた。なおパンデミック中に支払い免除が数回延長され、連邦政府に2,000億ドル近い損害を与えたが、債務制限協定の条項で再度の停止は禁止されていた。
ローンの支払いが9月に迫っていることもあり、バイデン政権は新たな学生ローンを提案するとし、上院共和党も、手続きの透明性の向上、大学院学位取得のためのローン額の制限、代替返済計画改革の実施などを含む一連の法案を提出している。
3つ目の判決はLGBTQの客へのサービスを拒否できるというもの。コロラド州のウェブデザイナーは、性的指向を理由に顧客を拒絶するのを禁じる州法は、宗教上の理由から同性婚に反対する原告が同性婚のためのサイト制作を拒否する権利を侵害し、憲法修正第1条に違反すると主張していた。裁判所はこれに同意した。
が、種々の問題でトランプ側に立つことの多いハーバード大法科大学院の名誉教授アラン・ダーショビッツは、判決は「紙一重だが極めて危険だ」「信心深いカトリック教徒がビジネスをしていて、離婚した人にはサービスしないと仮定してみよう。裁判所は同じ判決を下したろうか」と疑問を呈した。筆者も同感だ。トランプは3つの判決を十把一絡げに賞賛するが、「心の問題」である3つ目のケースには、他の2つよりも緻密な議論を要する。
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関連して、このところの岸田政権の支持率低下の要因の一つには、「心の問題」の本質的な理解を欠く岸田の冷たい性根に国民が気付いたことにあると筆者は思う。一連の「自切」人事然り、LGBT法案で自分は表に出ず、萩生田や新藤や古屋に拙速に進めさせて泥を被せた手法然り。
萩生田は政調会で自民案を通した際、検討項目が80余りあるとした。その後、維新・国民案の「全ての国民が安心して生活できるよう留意」や学校教育での「家庭及び地域住民その他の関係者の協力」などの文言を飲み国会も通した。
厚労省が先月末に通知した「施設側が身体的な特徴の性をもって男女を判断し、断ることを容認する内容」は80余の一つに過ぎない。萩生田が安倍の遺志を継ぐなら、やるべき地方自治体や学校や企業の行き過ぎた対応に歯止めを掛ける作業は山積している。
岸田は6月21日の記者会見で「今年の夏、政権発足の原点に立ち返って、全国津々浦々の現場におじゃまして声を聞くことに注力する」と述べ、全国を行脚するという。が、岸田が今むしろ思いを致すべきは、岸信介の述べる次のようなリーダーシップの要諦ではなかろうか。
大衆に追随し、大衆に引きずり回される政治が民主政治とは思わない。・・民衆の二三歩前に立って、民衆を率い民衆と共に歩むのが本当の民主政治のリーダーシップだ。
81回の外遊で共産中国の脅威を各国首脳に説き、保守に回帰させて見事に祖父の政治姿勢を踏襲した安倍と岸田とのこの辺りの器や心根の違いを、一周忌を迎える国民は実感している。「大衆」にも米国にも「引きずり回される」岸田は、共和党に代われば政策も変わると心して、今回の最高裁判決を玩味すべきだろう。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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