さて、国家公務員の志望者が減少しているという件、特に東大生の間で人気が落ちてきているという点に話を戻そう。公務員の劣化という形で不安を煽る世の報道を前にしつつ、私は、そんなに問題だとは思っていない。むしろ、改革を進めるチャンスなのではないか、という風に捉えている。

確かに、人気は、ないよりはあった方が良いに決まっているし、国家公務員の質が劣化することは良くないのは論を待たないが、捉え方次第だと思う。「寄らば大樹」で、皆が安定志向で国家公務員を目指すのではなく、ベンチャー企業への就職をしたり、場合によっては起業してしまったり、或いは、より現場志向でNPOへの就職などの形で社会を良くしたりすることは、悪いことではない。

霞が関の側から見ても、受験勉強の王者たちの集まりの東大生ばかりが官僚になるのではなく、様々な特性をもった方々が霞が関に集って政策を担当するようになることは、むしろ、歓迎すべきことではなかろうか。

本質的に大事なのは、単に「名誉だから」とか「社会的評価が高いから」ということではなく、公務に尽くしたいとの志をしっかり持った者が、数多く集って、霞が関をより本質的な仕事が出来る場に変えていく、ということだ。減ったとはいえ、受験者数は、定員を十分に超えているわけなので、むしろ、志をもった、覚悟のある良い人材を多く集めることが肝心だ。

そのためには、具体的にどのような制度改革が必要であろうか。私は特に、新卒一括採用の枠組みで、地頭の良い東大生等を多数取ることに躍起になるのではなく、社会のことをある程度知り、その上で公務に尽くしたいとしっかり考えてアプライしてくる志ある者の中途採用を強化すること、特に、一度、公務員を経験して民間に転じた者で、再度、志をもって公務に尽くしたいと考える者を重点的に採用することが鍵だと思っている。

この点、先行した動きを見せていて注目に値するのが神戸市の動きだ。昨年度、今年度と神戸市で2年続けて「人材育成に関する懇話会」の委員や、「新たな人材獲得戦略に関する懇話会」の座長を務めさせて頂いた。

かつてのように、京大や神戸大卒の優秀層が新卒で取れなくなってきているという実態の下、一度辞めた方の引き戻しや中途採用重視への切り替えを私も主張したところ、早速に、キャリアリターン制度を創設したり、新卒と中途採用の割合を半々にするなどの制度改正をしたりしている。

東京にいる神戸への想いのある方々を市役所職員として呼び戻そうと、タクシー広告まで打つなど、試行錯誤を繰り返しながら進めているが、こうした動きが、各地や国で本格化することに期待したい。大事なのは、志を持った人材の確保である。

【参考】

・神戸市 キャリアリターン制度

・神戸市の中途採用の拡大

※ 経験者採用東京説明会 7月23日(日)13時30分~開催!@渋谷QWS 市長登壇! ※ 経験者採用枠 通年募集実施中! 25歳~39歳(R6.4.1現在) Bターム(7月、8月)、Cターム(9月、10月、11月)、Dターム(12月、1月、2月) 申込受付期間 毎月1日~15日 ※「大卒通年枠」や「経験者枠」等は、特別な公務員試験対策は必要ありません。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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