「お通し」500円をやめて安心感をもたらす
フードメニューは、青森県民にとってはソウルフードといえるなじみ深いメニューをラインアップ。人気メニューとして「八戸前沖さば冷燻」小900円(税込、以下同)、大1700円、「貝焼き味噌」小1000円、大1500円、「にんにくの丸ごと揚げ(十和田産)」750円、「青森馬刺し」1500円、「弘前いがめんち」950円、「十和田バラ焼き」小1200円、大1800円、「八戸せんべい汁」1100円、「筋子納豆ごはん」950円などが挙げられる。

取材した5月の季節メニューでは「トゲクリガニ」1杯2000円、「海峡サーモン」1200円、「下北産みずだこ刺」1100円、「ほや刺」900円、「こごみの胡麻和え」600円等々。グランドメニューに加えて、季節メニューも20品目ほどあるため、新規に訪れたお客は青森料理の奥深さに感激し、リピーターも飽きることがない。


日本酒の地酒は常時約20種類用意している。「後味すっきり」「香り華やか」「米の旨味」の3タイプに分けてラインアップし、お客は選ぶ際その都度、茂木さんに料理とのペアリングなどを含めて質問し、それに応えるというパターン。それぞれ1合(片口)と60ml(グラス)と選べるようにしている。ちなみに人気が高いのは「香り華やか」の「豊盃 特別純米酒」1合1200円/60ml500円(以下同)、「田酒 特別純米酒」1200円/500円、「陸奥八仙 赤ラベル」1400円/550円となっている。青森の地酒のほかに、ソフトドリンクとして「ふじ」「ジョナゴールド」「御所川原」の3種のりんごジュースが各700円。他にも、「青森ごぼう茶ハイ」700円などが特徴的だ。

ちなみに同店ではコロナ期間中に「お通し」を提供することをやめた。一番の理由は、先に注文を受けた料理をつくっている時に、新規のお客が入り、お通しを用意することで先の料理の流れが止まってしまうこと。そして、お客が頼んでいない料理を出すことは不本意なことではないかと考えたからだ。そこで、かつて一人500円で提供していたお通しが今はない。
筆者は日本酒好きの若い女性の友人と2人で食事をした。1杯2000円のトゲクリガニを1個ずつ食べ、青森名物のメニューをあらかた食べ、友人が「ああ今日もよく飲んだ」というタイミングまで食事をしたところ会計は1万6500円。予想していた金額より低かった。それは、これまで居酒屋であればお通し代、高級店であればサービス料という目に見えない金額が付加されていることに慣れていたからであろう。その点、同店はお客にとって青森の料理や地酒を安心して飲食できる店である。客単価は5000円弱となっている。
「青森の店」を磨くために足しげく探訪
同店のホームページを見ると、実に内容が豊富だ。店舗情報、お品書きをはじめ、茂木さんと小池さんの詳細なプロフィール、「想い」と題して同店をオープンするに至った経緯もつづられている。店舗のオペレーションは茂木さんがホール担当、小池さんが厨房担当の2人体制である。これからは同店「一店主義」に徹して、2人で働きやすい環境を保ちながら店を運営していくという。
コロナ禍での休業期間中は、小池さんがYouTubeを配信、店内で販売するグッズに新しいアイテムを加えたり。茂木さんは書類を作成、ほかは毎日津軽三味線の練習をしていた。また、友人と和楽器を主体にしたバンドをコピーし、ライブ動画を作成して店内で放映。それを見たお客との話題が弾んでいる。

店長の小池さんは横浜育ちであるが、前職の営業マン当時に青森を担当した。その時に触れ合った青森のバイヤーがみな情に厚かったことから、青森の人情に憧れ、青森の文化をリスペクトするようになったという。小池さんは、今でも時間的に余裕ができると青森に赴いている。その目的は、まず仕入先へのご挨拶、青森の観光地巡り、青森県内の高校周辺を散策すること。「りんごの花」のお客が「青森の〇〇高校出身」ということを知ると、小池氏がその高校の周りを散策した経験を話題に添える。するとお客との距離感が一気に縮まるという。
そして、お客から情報を得た、青森のラーメンの名店探訪も長く継続しているそうだ。地域のさまざまな祭りも体験している。青森県内には40の市町村があるが、まだ訪れていないところは3カ所のみという。このような「りんごの花」の2人の地道な積み重ねが、歳を重ねてきて店の風格を増してきている。
(文=千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト)
提供元・Business Journal
【関連記事】
・初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
・地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
・有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
・現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
・積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?