2021年6月24日に予約が開始されたマツダ CX-60には、ディーゼルエンジン+マイルドハイブリッド(MHEV)モデルが用意されています。欧州ではメルセデス・ベンツやBMWなどが同様の組み合わせを採用しているものの、日本ではほとんど用いられることはありませんでした。どんな理由があってマツダはディーゼルMHEVをこの時期に投入するのでしょうか。
目次
ディーゼルマイルドハイブリッド(MHEV)とは?
ガソリンフルハイブリッドとの違いは?
ディーゼルマイルドハイブリッドのメリット
ディーゼルマイルドハイブリッドのデメリット
マツダが新型CX-60のディーゼルにMHEVを採用する理由は?
ディーゼルマイルドハイブリッド(MHEV)とは?

マイルドハイブリッドとは、車の発電機となるオルタネーターの代りに高出力のモーターを用いて発電とパワーアシストの両方を行う、簡易型ハイブリッドシステムとも呼べる存在です。
マイルドハイブリッドの最大の利点は、モーター出力やバッテリー容量をそれほど大きくする必要がないため、ハイブリッドシステム導入のためのコストアップを抑えつつ燃費性能を向上させられる点です。しかしあくまで簡易的な装置であるため、できることは発進や加速のアシストに限られます。
ディーゼルエンジンは基本特性として低回転域でのトルクが大きく、ハイブリッドシステムはおろかマイルドハイブリッドに頼らずとも十分な燃費性能と走行性能が得られるため、ガソリンエンジンほどの恩恵はありません。
それにも関わらず、2021年秋発売のマツダ CX-60には3.3L 直列6気筒エンジン+48Vマイルドハイブリッドモデルのラインナップが決定しています。
ガソリンフルハイブリッドとの違いは?

ガソリンフルハイブリッドもディーゼルマイルドハイブリッドも、減速時の運動エネルギーを電力として回収し、必要なときに使う点では同じものです。ただし、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンでは単体での基本特性が異なるために、適したハイブリッドシステムも違ったものになります。
仕組みが大掛かりなフルハイブリッドシステムの追加は車重が著しく増加してしまい、総合的な走行性能を落とす場合があります。また、フルハイブリッドシステムの稼働電圧は場合によって600V(ボルト)以上にもおよび、感電対策などの必要性から製造コストの上昇は確実です。
中回転域での効率に優れる代わりに、発進や低速からの加速は苦手なガソリンエンジンには、コスト高であってもフルハイブリッドシステムが有効です。車体を動かせるほどの高出力モーターに効率の悪い低速域走行の駆動を任せることで、燃費を大きく向上させられます。
乗用ディーゼル車に搭載するならマイルドハイブリッドが有効
それに対して燃料代が安価な軽油を用いるうえ、高効率領域がガソリンエンジンよりも低回転にあるディーゼルエンジンは、多大なコストをかけてフルハイブリッドシステムを搭載してもガソリンエンジンほど燃費の改善は見込めません。
そのため、日本においてディーゼルエンジン+ハイブリッドシステムの組み合わせは、少しでも燃費を改善したいトラックやバスにしか用いられることはありませんでした。
信号待ちや渋滞で発進と停止を繰り返す乗用車用ディーゼルエンジンをハイブリッド化するなら、フルハイブリッドよりも低電圧かつ安価なコストで追加できるマイルドハイブリッドシステムの方が適しています。