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前回は33カ国と1地域における同性婚合法化の要因について大まかな考察を試みた。
(前回:何が同性婚合法化を促したのか①:33の国と1地域)
今回は南アフリカ共和国と台湾に的を絞ってみたい。
1. 南アフリカ共和国アフリカ大陸には54の国があるが、うち32カ国が同性愛を法律で禁止している(Countries that still criminalise homosexuality)。世界全体の禁止国は64なので、半分をアフリカ諸国が占めていることになる(BBC, 31 May2023)。同性愛を嫌悪する風潮(Homophobia)も根強く、ゲイを狙った暴力も多発している。
こうした中にあって、南ア政府は、2005年に憲法裁判所が既存の婚姻法制が同性カップルの結婚を認めないのは差別であり、憲法違反に当たるとの判断を受け、翌2006年、新法を制定し、同性婚を合法化した(NBC News, Nov. 16, 2006)。
制定をめぐっては、教会など宗教団体から激しい反対があり、政権党のアフリカ民族議会(ANC)の中にも反対する議員が多数いた。だが、ムベキ大統領と野党リーダーが全議員に賛成票を投じるよう圧力をかけ、可決できた(The Guardian, 4 Dec. 2006)。
1994年、アパルトヘイト撤廃後に制定された憲法は、世界で初めて性的指向に基づく差別を禁止していたので、合法化によって憲法との整合性が図られた。反対を乗り越え成立に至った背景には、憲法を支持すべきとの合意が共有されていた点に加え、アパルトヘイト撤廃に対する同性愛者の貢献に応えるという面もあった(The Guardian)。
合法化によって結婚式を挙げるカップルが増え、関連業界へのビジネスチャンス到来が予想された。そのため、同性婚法制は産業界からも歓迎された。法案可決を見込んで、ホテルの式場やパーティ用品、指輪の広告が大々的に登場したという(The Guardian)。