また、現代中国語のかなり大きい部分が日本語からの外来語ですし、アニメや和食などは世界から広く受け入れられています。私たちはすでに世界史の主役なのです。

また、本書では政治外交史にまとをしぼり、経済や文化は理解を助ける程度に留めていますが、これは、日本という国の行く末をみなさんに考えてもらうというのに最も適しているからだと思ってのことです。

文化などについては、「365日でわかる世界史」(清談社)で世界史上の各分野ベスト100とか行った形でも詳しく取り上げています。

政治家にとっての世界史の知識の重要性

政治家にとって歴史を知るということはもっとも重要な専門的素養だと思います。かつての大政治家はいずれも素晴らしく古今東西の歴史に通じた知識人であり、その多くは素晴らしい歴史的洞察を示した著作をものにしていました。

先進国首脳会議(サミット)が始まったころ議論を主導していたジスカールデスタン仏大統領やシュミット西独首相など本当に素晴らしいインテリでした。日本でも旧制高校世代の吉田茂、岸信介、福田赳夫、大平正芳、中曽根康弘などはそうでした。

しかし、ポピュリズムの時代になってしまった現在では、サミットの参加メンバーをみても、そういう人はほとんどいません。これでは、情報機関出身のプーチン大統領に歯が立ちそうもありません。

さらに、日本では、歴史教育が学者たちの内輪の多数説で組み立てられています。そうすると近代史も古代史もなどもっぱら日本の過去を否定するとが目的のような人たちが研究者に多いとそれに引っ張られてしまっています。

そこには、一般国民が日本人として日本国家の国益を主張していくための知識を得るということが、何ら考慮されていません。なにも、日本の国益を実現するだけが歴史を勉強する目的でありませんが、日本国家が何を主張してきたのか、いま、主張しているのかも知らないのでは話になりません。

また、歴史学者は証拠に基づく確実な文書や遺跡に拘るのですが、政治家・外交官・官僚などが情勢分析をするときは、噂に至るまで集めて、総合的に評価し、複数の可能性に備えて対策をうちます。私は歴史家もそうあるべきだと思っています。

動機のようなものも、それを重視しすぎると陰謀史観になってしまいますが、重要な考慮要素だと思います。

※ 出版記念講演をある団体が組織してくださいます。8月9日13時30分から文京シビックセンターで開催します。事前申し込みはいりません。

※ 飯山陽氏という中東専門家の若い方から「八幡和郎氏がドヤり顔でさらけ出す中東無知」とかいう駄文を書いて、私のアゴラに載せた記事の批判をしているが、固有名詞の表記が不適切だとか丁寧にご指摘いただいたのは恐縮で感謝するが、「『皇太子は、トルコでのジャーナリスト殺害事件への関与を疑われており、フランスとしては困った人物だが、石油パワーを考えたらそんなことはいってられない』の一文もいい加減な文章です。ジャーナリスト殺害云々については、サウジ国内で犯人が裁かれ被害者遺族とも話がついている。それを、事情もよく知らない八幡氏のような人物がほじくりかえし、それがあるから『フランスとしては困った人物』だと、なぜかフランスという一国の「お気持ち」を手に取るようにわかっているかのごとく描写する。」と書かれているが、サウジで解決済みだとユニークな主張をしておられるのは知ったことでないとしても、フランスでこの訪問はそのように報道されているわけだし、フランスの官僚養成機関の卒業生としてフランス外交の気持ちが手に取るように分かるのは当たり前なので、そんなこと言われても困りますということだ。私の書いた内容について、専門家と称される方から論評いただいたなら、参考になるかと思ったが、気に食わないということしか書いてない。これほど内容のない論評も見たことない。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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