次に、この森林環境税が、いかにおかしな税かをお伝えしていこう。

森林環境税は、お金配りが5年も先行して実施されている

森林環境税による住民税の上乗せは来年2024年度からだが、森林環境税自体は、2019年に創設されている。森林環境税は、森林環境贈与税とセットで成立しており、この森林環境贈与税で、自治体へのお金配りが先行して開始した。

「森林整備が緊急の課題」として、先行して2019年から全国の自治体に補助金配布が始まった。目黒区には森林環境贈与税として、毎年2000万程度の補助金が入ってきている。目黒区のような都会で、この補助金を何に使うかというと、生物多様性の保全とか、木材を使用した家具や遊具を購入するとかであり、全く緊急性はない。それどころか、実に全国で20%もの自治体が、使い道がなくて全額基金に積み立てているというありさまだ。

全国の自治体から税金徴収するので、不公平のないよう全国の自治体に補助金を配る。そしてその補助金額の基準は、森林の面積や林業就業者数、人口を元にしているので、森林が殆どない大都会にも多くの補助金が配られる。実に、矛盾が矛盾を呼んでいる。

負担感を感じさせない巧妙な増税

お金配りの仕方も矛盾だらけだが、お金の徴収の仕方も実に巧妙だ。

この図の通り、これまで復興増税として、2014年から10年間、個人住民税均等割額に上乗せして毎年1,000円徴収されていた。なので、本来なら2024年度からは住民税が1,000円下がるはずだが、この1,000円ぶんが、名前を変えて森林環境税として新たに徴収されることになる。

区民としては支払う住民税の総額に変わりないので、「新たな負担増」とは感じられにくい。ゆえに、徴収しやすいと考えたのだろう。まったく、巧妙で嫌なスキームだ。

環境を良くしたいなら、増税ではなく環境減税だ

配り方を変えればいいとか、増税の前に身を切るとかではなく、そもそも環境保護のために増税は必要ない。高知県など、以前から独自で森林環境税を作っている自治体もあるが、その税収の多くは啓発事業に使われている。

更には、「環境税のおかげで環境が良くなったので、環境税を廃止します」なんていう話も聞かない。今回の森林環境贈与税がおかしな補助金配りになっているように、増税してお金を配っても矛盾が多く、結果として半永久的に環境税が取られるだけだ。

ちなみに、高知県では、県独自の森林環境税と区別するために、この森林環境税を、「国の森林環境税」と呼んでいる。恐るべし二重課税だ。

環境を良くしたいなら、むしろ、環境保護に貢献した企業などに減税をすべきではないか。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?